保定方法:ハンドリング
ケージ交換は飼育上重要な作業であり、また動物の健康状態を観察する機会でもあります。その際のハンドリングは、動物に不要な警戒心を与えることなく、適切なハンドリングによって動物への負担を少なくし、観察を容易にします。ここでは利き腕を右と想定した作業を説明します。
【保定とは】
*目的とする処置を行うことができる最小限の拘束
*優しく確実に動物の動きを制限する
*過度の保定は、動物に不要な苦痛を与えることになる
マウス
マウスのつかみ方
:尾の中央部を親指と人差し指で軽くつまみ、そのまま静かに持ち上げる。
マウスの一般的なつかみ方
マウスの保定方法
@ ケージのフタなどにマウスをのせ、尾をつかんでいる手で軽く尾を手前に引くと、動物は抵抗して体を伸ばすので、反対の手の親指と人差し指でマウスの頸部をしっかりつかむ。
A さらに頸部をつかんだ手で背部皮膚を中指と薬指でつかみ、持ち上げる(このとき、薬指と小指の先でマウスの尾根部を押さえると動物は手の中でおとなしくなる)。
マウスの保定の仕方 マウスの保定
【注意】
*保定の際、皮膚をあまりきつくつかむとマウスの首を締付けることになる。気道を確保し、動物が呼吸できる
状態にしておく必要がある(頸動脈を圧迫しすぎると酸欠状態になるので注意)
*腹腔投与を行う場合は、尾根部と左後肢を薬指や小指で保定する。
ラット
ラットのつかみ方
@ 新生児や幼弱なラットでは頸背部の皮膚を正中線に沿って軽くつかむか、動物を両手で包み込むようにしてすくいあげる。
A 背部左側より左手を廻し、人差し指と中指で左前肢を挟みながら右前肢方向に持っていき、さらに薬指と小指は腹部を抱えるように、親指は人差し指につけるよう頸部を廻して持ち上げる。
B 短時間であれば、尾の中央部から付け根部分を持って持ち上げてもよい。
ラットの一般的なつかみ方
ラットの保定方法
1)ラットが幼若な場合:マウスと同様に行う。頸背部の皮膚を大きくつかむとき、首が動かないようにしっかりつかむことが重要である。
2)ラットが成獣な場合:ラットを背部からつかみ、術者の胸にはわせ、人差し指と中指の間に頭を挟むようにして持ち上げる。尾は小指で挟むか、またはラットの後肢を術者の胸に押し付けて保定する。
ラットの保定方法1 ラットの保定方法2
ハムスター
ハムスターのつかみ方
@ 両手で動物の両脇を包むようにして持ち上げる。
A 片手で取り扱う場合にはケージのふたの上に動物を置き、親指と人差し指で頸部の後ろの皮膚をたぐり寄せてつかむ。
ハムスターの一般的なつかみ方1 ハムスターの一般的なつかみ方2
スナネズミ
@ マウスと同じ要領で取り扱う
ウサギ
@ 頸背部の皮膚を右手でつかんで持ち上げ、左手を臀部に当てて体重を支える。
A 金網ケージから取り出す時は、右手で頸背部の皮膚をつかみ左手で後肢を包み込むように持ち上げる。
B 飼育室内で持ち運ぶ時は、Aの方法でつかみ、そのまま術者の腹部に添えるように引きつけ、左腕をL字型に曲げて抱きかかえるようにしながら、後肢を軽く抑える。つぎに、つかんでいた右手をゆるめ、軽く頸背部に置く。
モルモット
@ 体重300gくらいまでのモルモットは片手で背部から脇の下にかけてつかみ、静かに持ち上げる。
A 体重400〜500g以上の大きさのモルモットを片手でつかむ場合は、掌を前方からモルモットの腹部側に入れて親指を右脇下に当て、小指と薬指を左前肢付け根を挟みこむようにする。人差し指と中指で片方の後肢を挟むこむようにしてつかむ。
B 両手を用いる場合は、背部より親指と人差し指を脇下にまわし、一方の手を臀部に当てて体重を支える。