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中電地域包括ケアプラットフォーム共同研究講座


共同研究講座の概要

■目的
本共同研究講座は、藤田医科大学の高度な医療知見と中部電力グループのインフラデータ等を融合させ、住民が健康で安心して暮らせる「地域包括ケアプラットフォーム」の構築を目的に2020年度に設立されました。

■成果
第一に、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の社会実装を推進しました。(図1)アプリ「MeDaCa」を導入し、内科外来を中心に電子カルテと連携した検査結果のデジタル受渡を定着させ、累計登録者は710名に達しました。
第二に、個別化医療の高度化です。ゲノム医療の社会実装に向け「ジェノニクス株式会社」を2021年6月に設立し、現在は遺伝子検査結果を電子カルテ上で管理するとともに、処方時に薬物副作用リスクを自動警告するシステムを開発し、2026年5月から運用開始いたしました。 (図2)
第三に、生活データを活用した未病・疾患研究です。スマートメーターから得られる電力データをAI解析し、フレイルや認知機能評価の実証を行いました。特にうつ病研究においては、深夜の電力消費増などの「客観的行動指標」を確立し、主観に先行する病状変化や回復の兆しを可視化しました。また、藤田医科大学病院近郊(名古屋市緑区)でのまちづくり(図3)では、オンライン健康相談などの生活密着型サービスの受容性検証を行い、次世代型地域包括ケアのモデルを提示しました。本講座は、データに基づく精緻な医療と地域生活の安心を繋ぐ強固な基盤を築き上げました。

図1

図2

図3

共同研究講座責任者のコメント

藤田医科大学 中電地域包括ケアプラットフォーム講座 教授 
近藤征史

過去5年間にわたる本共同研究講座の歩みを振り返り、産学連携がもたらす革新的な可能性を改めて実感しています。当初、我々が掲げた「医療と生活データの融合」というビジョンは、今や具体的なシステムや臨床研究の成果として結実し、地域包括ケアの新たな地平を切り拓いています。
活動の大きな柱となったPHRの推進では、患者さんが自身の健康情報を主動的に管理する文化を醸成しました。医師が診察室でボタン一つで検査結果を患者さんのスマートフォンに共有する運用は、情報共有の円滑化に寄与し、医師と患者さんのより良い関係構築につながる取り組みとして位置づけられます。MeDaCa を用いた運用は2026年2月末をもって終了しましたが、本取り組みを通じて得られた知見や活用方法は、今後の医療機関と患者さんをつなぐより良いアプリケーション開発の基盤となるものと考えられます。これらの成果は、新たなアプリ開発において有効に活用されることが期待されます。
また、ゲノム情報を臨床現場でリアルタイムに活用し、処方安全性を高める仕組みを構築できたことは、藤田医科大学が目指す「高度な個別化医療」を具現化する象徴的な成果です。
特に深い示唆を得たのは、電力データを活用した精神疾患の研究です。我々は当初、症例ごとの生活パターンの大きな「ばらつき」を解析上の障壁と考えていました。しかし、解析を深める中で、このばらつきこそがノイズではなく、患者さん一人ひとりの隠された苦痛や生活の乱れを如実に語る「行動表現型」であるという確信に至りました。うつ症状が悪化する際の「深夜の過覚醒」や「午前中の活動消失」が、電力消費データを通じて客観的に数値化されたことは、精神医学における診断や休職判断に、従来にはなかった「客観的エビデンス」を付与する画期的な発見です。(図4)
うつ病が多様な側面を持つことへの気づきは、医療のあり方を見直す契機となりました。画一的な尺度で患者さんを評価するのではなく、デジタル技術を活用し、それぞれの生活リズムに寄り添った理解を深めていくことが求められます。こうしたアプローチは、より個別性を重視した医療の実現につながると考えられます。
名古屋市緑区での実証を含め、この5年間で得られた知見は、システムという「形」を超えて、地域住民の安心を支える「思想」として根付いたと確信しています。本講座で築いたプラットフォームと多職種間の連携力は、今後、さらなる超高齢社会における地域課題を解決するための羅針盤となるでしょう。これまでの関係各位のご尽力に深く感謝し、本講座の成果が次世代の社会システムへと昇華していくことを切に願っております。