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先端臨床検査技術開発共同研究講座


共同研究講座の概要

■目的
藤田学園と株式会社日立ハイテクは、AI、ロボット、デジタル技術を活用して次世代の臨床検査システムを構築し、患者サービスの向上と検査業務の効率化を実現することを目的として、6年間にわたり共同研究を実施しました。特に、採血待ち時間の短縮と見える化による患者満足度の向上、検査精度および安全性の向上、医療従事者の業務負担軽減、人手不足への対応を重点課題としました。また、AIによる検査オーダ支援、自動採血技術、検体搬送・仕分けの自動化などを通じて、臨床検査室のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、将来的なスマートホスピタルの実現に資する実用的な技術基盤の確立を目指しました。
■成果
共同研究では、AI採血呼出し時間予測システムを開発し、予測誤差が±4分以内で95%、±3分以内で90%という高い精度を達成しました。この成果を基に、2025年8月から実運用を開始しており、患者アンケートでは約77%の方が待ち時間の過ごし方や心理的負担の改善を実感していることが確認されました。また、自動手指採血技術の実証研究では、血管画像解析技術を活用した新たな採血手法の有効性を確認しました(図1)。さらに、検体仕分けロボットは毎時1,200検体の処理能力を達成し、省力化と業務効率の向上に貢献しました。AI検査オーダ支援システムでは、甲状腺疾患を対象としてガイドラインとの一致率約94%を示し、適切な検査選択を支援できることを明らかにしました。これらの研究成果は複数の論文や学会発表として公表されており、AI・ロボット技術の臨床検査現場への実装可能性を実証するとともに、次世代スマート検査室の構築に向けた重要な知見を創出しました。

図1

共同研究講座責任者のコメント

藤田医科大学 医学部 臨床検査科 教授
先端臨床検査技術開発共同研究講座 教授
藤田医科大学病院 臨床検査部 部長
伊藤 弘康

このたび、2020年10月に開設された先端臨床検査技術開発共同研究講座が、2026年9月末をもって終了することとなりました。この6年間、株式会社日立ハイテクから多大なるご支援とご協力を賜り、多くの研究課題に取り組むとともに、貴重な知見を得ることができましたことに深く感謝申し上げます。
本共同研究は、単なる技術開発にとどまらず、「患者さんにとってより良い医療」と「医療従事者が働きやすい環境」の両立を目指した、極めて意義深い取り組みであったと考えております。近年、医療現場では少子高齢化に伴う医療需要の増加や医療従事者の不足が大きな課題となっています。そのような状況の中で、AIやロボット技術を活用し、採血待ち時間の予測、検体搬送・仕分けの自動化、自動採血技術、検査オーダ支援システムなどを実際の医療現場で検証し、その一部は実運用へとつなげることができた点は高く評価できる成果であると考えます。
特に印象的であったのは、患者目線を重視した研究姿勢です。AIによる採血呼出し時間予測システムは、単に業務効率を向上させるだけでなく、患者さんが待ち時間を有効に活用できるよう支援し、不安やストレスの軽減にも寄与しました(図2)。医療DXが注目される中、技術の導入そのものを目的とするのではなく、患者体験の向上へと結び付けている点に大きな価値があると感じています。

図2

図3

また、臨床検査部は病院運営を支える重要な基盤である一方、人手不足や業務量の増加による影響を受けやすい領域でもあります。本研究で開発された検体仕分けロボット(図3)やAI支援システムは、検査品質を維持しながら業務の省力化を実現する可能性を示しており、今後の検査室運営に大きな変革をもたらすことが期待されます。さらに、研究成果を論文発表や学会活動を通じて広く発信し、社会実装に向けた知見として共有できたことも、学術的に大きな意義を有すると考えます。
今回の成果は、産学連携によって生み出された優れた成功事例であり、未来のスマートホスピタルの姿を具体的に示したモデルケースであるといえます。技術革新が急速に進む時代において、本研究は「AIに置き換える医療」ではなく、「AIによって患者さんと医療従事者の双方を支える医療」の実現に貢献した点に大きな価値があります。今後、これらの成果がさらに発展し、多くの医療機関へ展開されることで、日本の医療の質の向上と持続可能な医療体制の構築に大きく寄与することを期待しております。

最後に、本共同研究講座の運営にご尽力いただきました株式会社日立ハイテクの皆様をはじめ、研究に携わっていただいたすべての関係者の皆様に心より感謝申し上げます。今後も本研究で培われた成果と連携の精神が発展し、新たな医療イノベーションへとつながることを期待しております。