藤田医科大学 整形外科

膝関節について

 「膝班」の担当分野は大腿骨転子下から足趾までと幅広く、扱う疾患も慢性疾患(膝関節・足関節・足部)、下肢外傷、関節リウマチ、足部壊疽など多岐に及びます。手術は毎週水曜日全日と木曜日半日に行い、適宜緊急手術にも対応しています。手術件数は約360件です。
 昭和50年に導入した人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)は約150件を変形性関節症(osteoarthritis: OA)や関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)に施行しています。近年整形外科領域では、ロボットを用いたTKAが行われ、その臨床研究は進化の最中にあります。ZIMMER BIOMET社製のロザ二―(Robotic Surgical Assistant Knee : ROSA Knee)が2020年7月に薬事承認されました。当院では、全国に先駆けてROSA KneeによるTKAを2020年9月から開始しました。ROSA Kneeの特長はインプラントの設置位置を計画する術者を支援し、効率よく正確な手技を追求することを目的として使用されます。1種類のカットブロックをつけた6軸のロボットアームが骨の動きを追従し、プログラムされた術中計画の骨切り位置に精度高くサポートします。ROSAはナビゲーション機能ですが、手術計画というプログラムに基づいて自動でカットブロックの制御を行う、術者によってコントロールされたアシストロボットです(図1a)。手順は術者が術中バランス評価とパネル操作によるプランニングを行ったあと、ROSAのロボットアームが骨切り位置(大腿骨遠位、脛骨近位、大腿骨回旋)へ正確に誘導されます(図1b)。そして術者による骨切り後にROSAが0.5㎜、0.5°の単位で骨切り位置とバランスを評価します。その結果をもとに術者が修正を加えるか判断し、インプラントを設置します。手術時間や術後のリハビリはほぼ従来法と同じです。ROSAを使用したTKAは導入後約8か月(2021年5月)で約50件、術者の支援ロボットとしての有用性を実感しています。今後も正確な手術の実現に向けて、手術手技を向上させていきたいと考えています。
 当班ではさらに、下肢外傷(大腿骨骨幹部骨折、大腿骨顆上骨折、膝関節内骨折、膝蓋骨骨折、下腿骨骨折、足関節脱臼骨折、足部骨折)約90件、当科の伝統的な手技である骨幹部骨折に対するEnder髄内釘固定術は、おもに脛骨骨折や開放骨折、学童期の下肢骨折、既存インプラントのある症例に行っています。その他、足関節・足部の慢性疾患は約20件、人工足関節置換術、足関節固定術、外反母趾手術、尖足に対するアキレス腱延長術などを施行しています。また、RA治療は膝関節、足関節、足部MTP関節に対する手術のほかに生物学的製剤やメトトレキセートによる内科的治療も行っています。加えて増えているのが糖尿病や閉塞性動脈硬化症などによる足壊疽です。約40件他科(皮膚科、血管外科、内科)からの依頼で下肢切断術を施行しています。

図1 ROSA knee

a:ROSA本体とカメラa:ROSA本体とカメラ

b:カットブロックをつけたロボットアームが誘導されるb:カットブロックをつけたロボットアームが誘導される

専門スタッフ紹介

早川 和恵(Kazue Hayakawa) 准教授

藤田保健衛生大学1989年卒業。
【専門】膝関節、関節リウマチ、下肢外傷

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伊達 秀樹(Hideki Date) 講師

防衛医科大学校1998年卒業。
【専門】膝関節、足の外科、下肢外傷

内藤 寧(Yasushi Naito) 助教

琉球大学2014年卒業。
【専門】膝関節、足の外科、下肢外傷

実績紹介

人工膝関節全置換術(TKA)・人工膝関節内側置換術(unicompartmental knee arthroplasty: UKA)

 TKAはおもにOA(図2)やRA(図3)、UKAは骨壊死(図4)やOAの内側罹患例に行います。左右罹患例には両膝同日手術も施行しています(図2)。目的は除痛、膝関節機能の回復によるADL、QOLの改善です。人工膝関節は多機種ありますが、当科では自家組織(骨や靭帯)温存に配慮して、主に前十字靭帯のみ切除するCR型を選択し膝蓋骨非置換、手術時間は片膝平均約70分です。後療法は両側例でも翌日から離床と荷重を許可し、入院加療は約2週間です。

図2 両側OAに対する両側同日TK図2 両側OAに対する両側同日TK

図3 RAに対するTKA図3 RAに対するTKA

図4 大腿骨内側顆部骨壊死に対するUKA図4 大腿骨内側顆部骨壊死に対するUKA

下肢骨幹部骨折に対するEnder nailing

(1)脛骨骨折:下腿は軟部組織が菲薄で特に脛骨骨幹部遠位は開放骨折になりやすい傾向にあります。脛骨近位関節外からのEnder釘の挿入は比較的容易で、開放創を避けて挿入することができます。脛骨骨幹部近位骨折の場合は脛骨遠位からの挿入も可能であり、分節骨折に対してもよい適応があります(図5)。
(2)学童期の大腿骨/脛骨骨幹部骨折:治療の多くは非観血的治療ですが、転位を伴った場合には観血的治療が望ましい症例もあります(図6)。早期の復学を目指す手術方法として有効で術後早期に自動運動が可能であり、入院期間を短くし家族の負担も減らせます。Ender釘は骨端線を避けて挿入することが可能であり、長さや径も豊富です。
(3)既存インプラントがある下肢骨折:既存インプラントを避けて挿入することができれば有用です(図7、8)。

図5 脛骨分節骨折に対するEnder髄内釘固定術図5 脛骨分節骨折に対するEnder髄内釘固定術

図6 学童期の大腿骨骨幹部骨折に対するEnder髄内釘固定術図6 学童期の大腿骨骨幹部骨折に対するEnder髄内釘固定術

図7 プレートを避けてEnder髄内釘を挿入図7 プレートを避けてEnder髄内釘を挿入

図8 人工関節のインプラントを避けてEnder髄内釘を挿入図8 人工関節のインプラントを避けてEnder髄内釘を挿入

足関節障害に対する外科的治療

OA、RAの足関節障害には人工足関節置換術(total ankle arthroplasty: TAA)(図9)や関節固定術を行います。TAAは距踵病変がなく、比較的変形の少ない例に施行され、可動性を保つことができます。固定術は高度変形にも適応があり、関節の安定化が期待できます。RAは距踵関節にも破壊が生じやすいため、距腿関節と距踵関節(Tibio-talo-calcaneal: TTC)を同時に逆行性髄内釘で固定することもあります(図10)。 

図9:人工足関節置換術図9:人工足関節置換術

図10:RAの足関節障害に対するTTC固定術図10:RAの足関節障害に対するTTC固定術

RAの前足部変形に対する関節温存手術

 RAの前足部障害は多く認められ、末期には中足骨骨頭が底側に脱臼し、足底に胼胝を形成します。治療は脱臼した中足骨頭を切除する切除関節形成術が行われていましたが、近年薬物による関節修復の可能性や関節機能を再獲得する目的で関節を温存する手技に変わりました。手技は左図のように中足骨骨幹部遠位を短縮骨切り後、中足骨頭を近位へ引っ張り脱臼を整復して関節を温存します(図11)。これにより可動域や踏み返しが可能となり除痛、さらに地面をとらえた良好な歩容を目指します。

図11 RAに対する関節温存手術図11 RAに対する関節温存手術

治療と担当医師のご案内

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