プレスリリース

藤田医科大学 伊藤祥輔教授らがイクチオサウルスが温血動物(恒温動物)であったことを証明

藤田医科大学 伊藤祥輔名誉教授と若松一雅特任教授のグループは、スウェーデン国のルンド大学ヨハン•リンドグレン准教授と名古屋大学大学院生命農学研究科の小鹿一教授らとの国際共同研究を行い、ジュラ紀にいた魚竜(水棲爬虫類)「イクチオサウルス」の化石化された脂肪層の発見、並びにメラニン形成についての最初の報告を行いました。
この研究成果は、国際的な総合科学ジャーナル『Nature』オンライン版(ロンドン時間2018年12月5日)に掲載されました。

研究成果のポイント

・魚竜イクチオサウルスの化石化された脂肪層とメラニン形成を世界で初めて報告。
・脂肪層の発見により、イクチオサウルスが温血動物であったことを証明。
・皮膚メラニンがカウンターシェーディングのパターンを形成。

本研究成果の内容

姿形、大きさがハクジラ類によく似ていることが知られている魚竜イクチオサウルスの特徴は、卵胎生であったことです。その化石の皮膚は内部層と表層、その下部に脂肪層をもっており、さらにメラニン形成を行っていることが、本研究にて示されました。
これは、化石化された脂肪層とメラニンの存在についての最初の報告であり、この動物が温血の爬虫類であることを示唆しています。
イクチオサウルスは絶滅した海棲の爬虫類であり、イルカなどの現生のハクジラ類に外形が類似しています。この外形の類似性はイクチオサウルスとクジラは海洋での生活に適応するために類似の戦略を進化させたこと、すなわち収斂進化(全く違う種類の生物が、同じような環境や生態系の位置に置かれることで、外見や器官がよく似てくること)を示唆します。
イクチオサウルスは温血動物であると考えられてきましたが、化石の保存状態が悪く、この点などを含め、類似性の比較は困難でした。リンドグレン博士(ルンド大学、スウェーデン)とその共同研究者は保存状態のよい、約1億8千万年前のイクチオサウルス標本の皮膚組織の組成を調べた結果、この動物の滑らかな皮膚の残存物が依然として柔軟性をもち、明確な内部層(真皮)と表層(表皮)、そしてその下部の脂肪層からなることを見出しました。この脂肪層は現生の海棲哺乳類の特徴であり、寒冷に対する断熱や浮力の増加をもたらし、また脂肪の蓄積に作用します。これは化石イクチオサウルスに脂肪層が見つかった初めての報告であり、イクチオサウルスが温血動物であったことを証明するものであります。
さらに、著者らはイクチオサウルスの皮膚がカウンターシェーディング、すなわち腹の部分が明色で背中の部分が暗色、のパターンでメラニンを形成していることを見出しました。このことは、ジュラ紀にすでにこのような特徴を持った生物がいた事を示しており、この色調は現生の海棲哺乳類にも見られ、隠蔽、紫外線防御に働き、体温調節に役立つものとなっております。

  • イクチオサウルスの化石

  • イクチオサウルス(Wikipediaより転載)

  • 1億8000万年前の色素細胞(メラノフォア)a) 枝分かれしたメラノフォアの光学顕微鏡写真,b) 長い樹状突起を持ったメラノフォアのsynchrotron-radiation X-ray tomographic microscopy (SRXTM),c) メラノソーム小器官を含むメラノフォアの透過型電子顕微鏡図

【問い合わせ先】
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藤田医科大学医療科学部化学教室 特任教授
若松 一雅
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