プレスリリース

自閉症スペクトラム症の新規治療薬開発で藤田医科大学と㈱プロトセラが共同研究契約を締結
~ 京都大学、東京都医学総合研究所を含む全国18施設で臨床研究 ~

藤田医科大学(所在地:愛知県、学長 星長清隆)とウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 浜島健爾)の連結子会社である株式会社プロトセラ(本社:大阪府、代表取締役社長 田中憲次、以下プロトセラ)は、2018年9月18日付で、自閉症スペクトラム症の新規治療薬の開発に関する共同研究契約を締結しましたのでお知らせします。
なお、本共同研究契約に基づき、今後、全国18施設※1で臨床研究が開始されます。

研究の背景

自閉症スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)はアスペルガー症候群と同じく、他者とうまくコミュニケーションが取れなくなる発達障害の一種であり、その発症原因については遺伝的な側面以外に環境中の化学物質等との関連性が指摘されているなど、特定には至っていません。
一方、自閉症スペクトラム症の中には結節性硬化症※2に伴って発症するタイプがあることが分かっており、2015年~2017年度の国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)※3での難治性疾患対策事業では、結節性硬化症における自閉症スペクトラム症に対し、結節性硬化症の治療薬であるエベロリムス※4が著効を持つことが見出されました。
しかしながら、エベロリムスはその強力な免疫抑制作用から口内炎や気管支炎、肺炎などの感染症が生じやすいこと、若年症例では全身管理下で小児神経科の本症専門医が治療する必要があること、さらに病態の軽減には数年に渡る継続的な服用が必要など、患者および医療関係者の双方の負担が大きいという課題があります。
これに対し本共同研究では、エベロリムスのmTOR※5活性抑制効果以外の自閉症スペクトラム症に有効な薬理作用をもたらしているバイオマーカーペプチドを探索し、発見されたペプチドによって、一般の自閉症スペクトラム症の診断や治療に有効な、より安全で負担が少なく、効果の高い自閉症スペクトラム症の診断法と治療法の開発を目指すものです。

研究の方法

はじめに、プロトセラが特許を保有する『新規ペプチドーム解析技術(BLOTCHIP®-MS法)』によって、エベロリムス※3投与で結節性硬化によって発症した自閉症スペクトラム症の奏功に寄与する新規バイオマーカーペプチドを探索した後、同じくプロトセラが特許を保有する『膜タンパク質ライブラリ(Membrane Protein Library®;MPL)技術』によって、バイオマーカーペプチド(リガンド)の受容体を探索します。
その後、発見されたバイオマーカーとしてのペプチドを合成して、自閉症モデルラットでの安全性薬理試験に加え、特に社会行動異常の改善効果を検証し、さらに、効力薬理試験で効果が示され最適化されたたペプチドについて、その受容体を探索し、安全性と効力に優れた受容体作動薬として、国内外で未だ試行中の治療抵抗性自閉症スペクトラム症の新規治療薬の開発を目指します。

※1 藤田医科大学腎泌尿器外科学、同大学難病治療学研究部門、同大学共同利用研究推進施設、同大学小児科、京都大学小児科、東京都医学総合研究所、静岡てんかん・神経医療センター、プロトセラを含む全国18の研究施設と共同研究を予定。

※2 結節性硬化症(TSC:Tuberous Sclerosis Complex)は、全身のさまざまな場所に腫瘍などの症状の出る病気。脳に出た場合には、てんかん発作や、自閉症症状、他の発達障害などがあらわれる。

※3 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)は、国が定める「医療分野研究開発推進計画」に基づき、医薬品創出、再生医療、がん等9つの統合プロジェクトを中心に、基礎研究から実用化まで一貫した研究開発を推進している。

※4 結節性硬化症治療薬エベロリムス(Everolimus)。免疫抑制剤・抗癌剤としてノバルティス社から発売されている。

※5 mTOR(mammalian target of rapamycin:エムトア)はタンパク質の一種。細胞増殖や血管新生、免疫などを制御する性質を有しており、その性質を利用したmTOR阻害剤の一種にエベロリムスがある。

用語解説

[1] BLOTCHIP®-MS法
従来の血液からあらかじめタンパク質を除去する解析方法では、タンパク質に結合したペプチドも除去されるため、ペプチドの全量を精確に測定することができませんでした。一切の前処理を必要としないBLOTCHIP®-MS法によって初めて生体試料中のペプチドの全量を定量できるようになりました。また、BLOTCHIP®-MS法は解析中の煩雑で長時間かかる操作を不要にした結果、多量の試料を短時間で測定できるようになり、従来のペプチドーム解析技術のボトルネックが解消されました(図1)。

参考文献:

1.Tanaka, K., Tsugawa, N., Kim, Y.-O., Sanuki, N., Takeda, U., and Lee, L.-J. "A new rapid and comprehensive peptidome analysis by one-step direct transfer technology for 1-D electrophoresis/MALDI mass spectrometry." Biochem. Biophys. Res. Commun. 379, 110-4. (2009)
2.Uchiyama, K., Naito, Y., Yagi, N., Mizushima, K., Higashimura, Y., Hirai, Y., Okayama, T., Yoshida, N., Katada, K., Kamada, K., Handa, O., Ishikawa, T., Takagi, T., Konishi, H., Nonaka, D., Asada, K., Lee, L-J., Tanaka, K., Kuriu, Y., Nakanishi, M., Otsuji, E., and Itoh, Y. "Peptidomic analysis via one-step direct transfer technology for colorectal cancer biomarker discovery." J. Proteomics. Bioinfom. (2015) S5-005.
3.田中憲次 「バイオマーカー開発とバイオマーカー検査機器の臨床応用」 体外診断用医薬品開発ノウハウ, R&D支援センター, p1-20 (2017)
4.Kazuhiko Uchiyama, Yuji Naito, Nobuaki YagiKatsura, MizushimaYasuki, Higashimura, Yasuko Hirai, Osamu Dohi, Tetsuya Okayama, Naohisa Yoshida, Kazuhiro Katada, Kazuhiro Kamada, Osamu Handa, Takeshi Ishikawa, Tomohisa Takagi, Hideyuki Konishi, Daisuke Nonaka, Kyoichi Asada, Lyang-Ja Lee, Kenji Tanaka, Yoshiaki Kuriu, Masayoshi Nakanishi, Eigo Otsuji, Yoshito Itoh "Selected reaction monitoring for colorectal cancer diagnosis using a set of five-serum peptides identified by BLOTCHIP®-MS analysis." Journal of Gastroenterology, (2018) 53(11), 1179-1185. doi: 10.1007/s00535-018-1448-0

[2] Membrane Protein Library®/BLOTCHIP®-MS法
細胞膜に存在する受容体は水に溶けないため、従来のタンパク質の精製、同定、性状分析といった解析技術が有効に働きませんでした。
プロトセラは受容体をその構造特性に関わらず人工リポソームのリン脂質二重層に再構成し、リガンド結合能を保持したままで膜タンパク質ライブラリ(Membrane Protein Library®;MPL)と呼ばれるエマルジョン溶液に転換する技術を確立し、培養細胞から組織や臓器に存在するあらゆる受容体を大量かつ安定的に供給できるようになりました(図2)。
このMPL法にBLOTCHIP®-MS法を組み合わせた複合技術により、未知のリガンドと未知の受容体を包括的に探索・同定、さらに両者間の相互作用を解析することが可能になりました。受容体医薬品は、分子標的医薬品の中で最も治療効果と安全性に優れ、世界の医薬品市場の60%(30兆円)を占めます。プロトセラが開発した リガンド・受容体相互作用解析技術により、生物の全身にあるリガンドと受容体を包括的に探索する道が開けました。

MPL/BLOTCHIP®-MS法で、従来技術では大変困難であった未知のリガンドと未知の受容体の探索・同定が実現しました。その特長としては、【1】GPCR型リガンド探索で従来法に比べて高いヒット率が実現したこと、【2】GPCR型以外の受容体とそのリガンドの探索も可能になったこと、さらに【3】全臓器、全細胞の受容体を含む全膜タンパク質が研究標的になったことなどを挙げることができます(図3)。

参考文献:
1.Masayoshi Shichiri, Daisuke Nonaka, Lyang-Ja Lee, and Kenji Tanaka. “Identification of the salusin-β receptor using proteoliposomes embedded with endogenous membrane proteins” Scientific Reports volume 8, Article number: 17865 (2018)
2.田中 憲次 「Membrane Protein Library™ とBLOTCHIP®-MS法を用いた免疫炎症疾患・癌領域の新規有用ペプチドとその受容体の探索と同定」 『がん免疫療法の新展開-祝本庶佑ノーベル賞受賞記念特集号-』 Medical Science Digest 45 (2): 52-56, (2019)

[日本語:内在性膜タンパク包埋プロテオリポソームを利用したサリューシン-β受容体の同定]

本件に関するお問合せは、下記までお問い合わせください。
なお、結節性硬化症の臨床試験への参加協力のお申込みについては、下記、客員教授 油井邦雄までお願いいたします。

【 お問い合わせ先 】

<研究内容に関すること>
藤田医科大学 腎泌尿器外科学講座
客員教授 油井 邦雄(主総括)
教授 佐々木 ひと美(総合統括)
TEL:080-6126-3548(油井携帯)
Email:yui16@bell.ocn.ne.jp (油井メール)

<研究技術に関すること>
株式会社プロトセラ
膜タンパク質&リガンド解析センター
代表取締役社長 田中 憲次
TEL:06-6415-9620
Email:info@protosera.co.jp

<報道・プレスリリースについて>
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