プレスリリース

東海地方初“睡眠時無呼吸症候群“の最新治療 「舌下神経電気刺激療法」を導入

本学ばんたね病院 睡眠健康センターは、 東海地方では初となる“睡眠時無呼吸症候群”に対する新しい治療法「舌下神経電気刺激療法」を導入し、7月13日に第1例目の治療を開始しました。
舌下神経電気刺激療法は、2021年6月に保険適用が認められた新しい治療法です。東海地方で導入しているのはばんたね病院のみで、全国では2施設目となります。導入施設が少ない理由として、本治療には頭頸部の外科的処置や日本睡眠学会専門医の認定が必要なため、実施できる医師が少なく、治療できる施設も広がらないことが挙げられます。
今回の治療では、第1段階として鎖骨下にパルスジェネレータ—の埋め込み手術を実施。今後は、リードの固定や副反応、切開創の治療など約1カ月間の経過観察を経て、神経への電気刺激による治療を行っていきます。

「舌下神経電気刺激療法」とは

舌下神経電気刺激療法とは、埋め込み型のパルスジェネレーターを鎖骨下に手術で植え込み、本人の呼吸に同期して微弱な電気で顎下にある舌下神経を刺激する治療法です。舌基底部の筋収縮を誘発することで、のどに落ち込んでいる舌を収縮させて前に出し、のどの空間を広げて空気の通りを良くします。
対象となるのは、CPAP治療に適さない方、またはCPAP治療に耐えられない中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんです。CPAP治療との比較試験では、主観的な眠気の改善において、舌下神経電気刺激療法のほうが優位であったことが報告されています。

鎖骨下に埋め込んだパルスジェネレーターから電気エネルギーを送出し舌下神経に伝えられ舌基底部の筋収縮を誘発

※CPAP治療とは…経鼻的持続陽圧呼吸療法とよばれ、欧米や日本国内で最も普及している治療法です。鼻に装着したマスクから空気を流すことで、睡眠中に気道が塞がれるのを防ぎます。
 

舌下神経電気刺激療法のメリット

・CPAP治療で使用するマスクの不快感から解放される
・治療後効果が続けば、通院の頻度が減り、通院にかかる負担が軽減される
 

舌下神経電気刺激療法のデメリット

・手術が必要な治療法であり、侵襲を伴う
・施行できる医師・施設が厳密に定められており、受けられる医療機関が限定されている
 

今後の展開

藤田医科大学ばんたね病院 睡眠健康センター 教授 中田 誠一
CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)治療は重症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対して確かに有効ではありますが、その実、CPAP治療の継続使用率は厳しい見方をすると50%もないのではないかと言われています。重症のOSAの方が治療を受けずに放置していると3分の1が5年以内に血栓が原因となる脳血管障害、心筋梗塞などを引き起こし、場合によっては命を落とすという事態も生じています。そこで新たに出てきたのが植え込み型舌下神経電気刺激療法という治療です。心臓のペースメーカー埋め込みと類似の手術治療ではありますが、欧米ではすでに2万件以上の症例があり、重症のOSAの患者さんにおいて成人であれば年齢を問わず、ほぼCPAPを必要としないくらいまで改善するというデータが蓄積されています。
今回、日本で2例目(東海地方では初)にてこの手術治療が藤田医科大学ばんたね病院にて行われ無事に経過しています。これから重症のOSAの人でCPAPが使えなくて困っておられる方への福音となればと願っています。