プレスリリース

総合アレルギー科 矢上晶子教授らの研究成果が皮膚科学分野の英文誌「Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology」に掲載されました

ニキビの内部には多様な菌が生息していることを遺伝子レベルで解明

本学 医学部総合アレルギー科(教授:矢上晶子)は日本メナード化粧品株式会社と株式会社ファスマックとの共同研究によって、ニキビ内部の菌の構成を遺伝子レベルで解析した結果、個々人で菌の構成が異なり、多様な菌が生息していることがわかりました。これらの結果から、ニキビには多様な菌が関与しており、菌全体のバランスを見た治療やスキンケアが重要だと考えられました。本共同研究の成果は今後、ニキビ治療やスキンケア技術の開発に活用してまいります。
なお、本研究成果は、皮膚科学分野の英文誌「Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology」の2022年9月号 に掲載されました。

一般に、ニキビの原因はアクネ菌といわれていますが、メナードではこれまでに、アクネ菌以外にもマラセチアなどの皮膚常在菌がニキビに関与していることを明らかにしてきました。ニキビにはより多くの菌が複雑に関与していることが予測されますが、その全体像についてはまだ不明な点が多く残されています。



本研究では、遺伝子を網羅的に解析できる次世代シーケンサーを用いてニキビ内部の菌叢※1を解析することで、そこに生息する菌の種類と構成比を解析しました。その結果、ニキビ内部では、アクネ菌の比率が高いものの、その他にも多くの種類の菌が生息しており、かつ個々人で菌の構成が異なっていることがわかりました。今回の結果から、皮膚の状態に個々人の菌のバランスが大きく関与していることが考えられ、菌のバランスを正常に保つことは、皮膚を健康な状態に保つことにつながると推測できます。

※1 細菌、真菌などを含む、ある特定の環境に生息する微生物の集まり。

 

1.ニキビ患者の皮膚表面・ニキビ内部の菌叢解析

ニキビ患者22名(女性12名、男性10名)を対象とし、次世代シーケンサーを用いて皮膚表面(ひたい、ほほ)とニキビ内容物(Tゾーン、Uゾーン)※2の菌叢解析を行いました。皮膚表面サンプルは綿棒を用いて皮膚表面を擦る拭き取り法、ニキビ内容物サンプルは面皰圧出器を用いて内容物を押し出す圧出法によって採取しました。なお、ニキビには細菌であるアクネ菌が大きく関与することが知られていますが、メナードは、真菌であるマラセチアもニキビに関与していることを明らかにしています。本研究では、細菌、真菌それぞれの菌叢解析を行いました〈図1〉。
各サンプルの菌叢解析の結果、細菌については、皮膚表面と比較してニキビ内部においてアクネ菌Cutibacterium の構成比が高くなっていました。また、ブドウ球菌Staphylococcus などの菌も検出されました。真菌については、皮膚表面、ニキビ内部ともに、マラセチアMalasseziaが多く検出されました。なお、皮膚表面、ニキビ内部ともに、細菌、真菌の構成比に男女差は認められませんでした。

※2 Tゾーンは、ひたい、鼻など皮脂分泌が多い部位。
Uゾーンは、ほほ、あごなど皮脂分泌が少なく乾燥しやすい部位。



図1 皮膚表面とニキビ内部の菌叢の違い

2.皮膚表面とニキビの菌叢の多様性

菌叢の指標の一つとして、どれくらい多くの種類から構成されているのかといった「多様性」が評価に用いられます。細菌において、皮膚表面とニキビ内部の菌叢を比較するため、遺伝的な相違に着目した解析法 Faith’s Phylogenetic Diversityによって多様性比較解析を行いました〈図2〉。その結果、ニキビ内部において、皮膚表面より多様性が高くなっていることがわかりました。つまり、ニキビ内部の菌叢は、皮膚表面よりもより多くの種類の細菌で構成されているということになります。この構成の違いがニキビに関与しており、菌のバランスを正常に保つことがニキビ予防に役立つと推測されます。

図2 皮膚表面・ニキビ内部における細菌の多様性
 

3.掲載雑誌・タイトル・著者について

雑誌名

Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology

論文タイトル

The microbiome in comedonal contents of inflammatory acne vulgaris is composed of an overgrowth of Cutibacterium spp. and other cutaneous microorganisms

著者

横井彩、 二村恭子、鈴木加余子、矢上晶子 (藤田医科大学医学部総合アレルギー科)
赤座誠文、三浦史帆里、八代洋一 (日本メナード化粧品株式会社)
高崎一人、西山依里、臼井敦子 (株式会社ファスマック)

DOI