医師の92%が業務効率化につながったと回答 生成AIを活用した「退院時サマリー作成支援システム」が実用化
~医療DXへの貢献めざし新事業会社が本格始動~
昨年からは、他メーカーの電子カルテシステムを導入している県内の総合病院でも実証実験を行い、汎用性を確認。実用化への目途が立ったことから、これらのノウハウを広く社会で共有するため、藤田学園の100%子会社であるフジタ・イノベーション・キャピタルとFIXER社が合同で新事業会社「メディカルAIソリューションズ」を設立し、5月から本格始動しました。新会社では、藤田学園が有する医療DXの知見と、FIXER社が培ってきたクラウド開発および生成AI事業の実績を生かし、「退院時サマリー作成支援システム」を地域のみならず全国へ展開することで、医療現場の業務改善および日本の医療の質向上に寄与することをめざします。
電子カルテの情報を基に数秒でサマリーを作成
「退院時サマリー作成支援システム」は、電子カルテに表示された【サマリー生成】ボタンをクリックするだけで、患者基本情報・診療記録などから必要なデータを抽出。わずか数秒で退院時サマリーの下書きを作成します。下書きは自由に修正でき、【取り込み】ボタンをクリックすれば、電子カルテに転記される仕組みになっています。これまで1件あたり10~15分かかっていた書類作成作業がたった数回のクリックだけで完結できるため、医師は浮いた時間を診療や患者さんとのコミュニケーション、研究などに充てることができます。また、生成AIが下書きを作成することで、サマリーの質の向上および均てん化が期待できます。退院時サマリーとは?
患者さんが退院する際に、他の医療機関や福祉施設でも適切に治療・ケアが継続できるよう、診断情報や治療経過、看護記録などをまとめた文書です。退院前に主治医が手入力で作成します。一方で作成には、複数の記録から必要な情報を収集→情報の取捨選択→文章の要約→記載内容および誤字脱字のチェック──と煩雑な作業が多い上、退院が決まってから短時間で作成しなければならないため、医師の時間外業務増加の一因となっていました。加えて、作成者によって取捨選択する情報が異なるため、記載内容の標準化が不十分であり、網羅性が作成者によって差があることも課題でした。
〈本システムの特長〉
- 電子カルテの診療記録データを基に、LLM(大規模言語モデル)が患者ごとの診療情報を要約し、自然な文章でサマリーを生成
- 【サマリー生成】【取り込み】ボタンをクリックするだけで、数秒で下書きを作成し、電子カルテに転記することが可能です。
- 生成された文章は医師が適切な内容に調整することができます
- 英語をはじめとする多言語への翻訳も可能
医師の81%が「満足」、92%が「業務効率化につながった」と回答
2025年3月に行ったアンケート調査(医師170名、複数回答あり)では、「退院時サマリー作成支援システム」を使用している医師の92%が「時間短縮、業務改善につながった」、81%が「満足」と答えました。導入後3カ月の累計短縮時間は約1,000時間に及んでおり、働き方改革が進んでいることがうかがえます。



他書類への応用、地域・全国での展開を視野に
本システムを退院時サマリーだけでなく、他の文書作成にも応用する準備を進めており、看護サマリーについては5月から現場での運用が始まっています。診断書についても6月より運用開始を予定しており、順次対象を広げていく予定です。病院全体で書類作成にかかる負担の軽減を図るとともに、新事業会社を通じて他の病院などにも本システムを展開し、医療従事者の働き方改革に貢献したいと考えます。
藤田学園における医療DX戦略
藤田学園では、少子高齢化や医療財政のひっ迫といった医療課題の解決と、誰もがいきいきと暮らせる活動長寿社会の実現に向け、かねてより医療DXを強力に推進してまいりました。さらなる体制強化を図るため、2021年にはデジタル戦略の立案を行う「デジタル戦略部」を設置。以降、医療DXの実証を行う「スマートホスピタル推進室」、それらのシステム構築を担う「ヘルスデータアーキテクチャーセンター(HDAC)」を開設し、産官学連携のもと高度医療情報ネットワークの実用化に取り組んでいます。


