2週間前と同じものを食べても、食事時間、咀嚼回数は変わらない
藤田医科大学(愛知県豊明市)臨床栄養学講座 飯塚勝美教授の研究チームは、テスト食(鮭弁当)を用いて、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ、一口回数の再現性、一致性を検討したところ、2週間前と同じものを食べた場合、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポは再現性、一致性が高いことを明らかにしました。これまで、テスト食を摂食した際の食事時間の再現性や一致度に関するデータは存在しませんでしたが、本研究成果より、決まった食事(テスト食)であれば、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポはその人固有の食行動を表す指標として用いることができます。
本研究成果は、スイスの学術ジャーナル「Nutrients」(7月25日号)で発表され、併せてオンライン版が公開されました。
本学研究チームはこれまでに、ピザやハンバーグ弁当を用いて、食事時間や咀嚼回数には男女差がある一方で、咀嚼テンポ自体には差がないことを明らかにしています(Nutrients 2025, 17(6), 962; Nutrients 2025, 17(9), 1576)。しかし単回のテストでは「たまたま早い・遅い」ということが起こり得るのではと考えました。そこで今回は、より複雑な食品(鮭弁当:鮭と5つの副菜、ご飯)を用いて、食行動パラメーターの「個人内再現性」と「一致性(集団の中の順番)」を検討しました。
%エラー20%以内、ICC0.7以上が良好とされますが、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポは男性でも女性でもほぼ良好な結果でした。ただし、一口回数(口に入れる食べ物の大きさに反比例)は特に女性では不安定な結果でした。
以上から、決まった内容の食事を食べると、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ(1分間あたりの噛む回数)は再現されることがわかったので、個人特有の食行動を表現する目印として使用できます。
図:男性と女性の食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ、一口回数の再現性、一致性の検討
2 藤田医科大学 医学部
3 藤田医科大学 羽田クリニック
4 藤田医科大学病院 食養部 *責任著者
本研究成果は、スイスの学術ジャーナル「Nutrients」(7月25日号)で発表され、併せてオンライン版が公開されました。
研究成果のポイント
- 同じ献立を食べる場合に、食事時間や咀嚼回数は同じ時間・回数を要するのかは、これまでわかっていなかった。
- テスト食を用いて2週間の間隔を空けて、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ、一口回数を測定した。
- Bland Altman解析(%エラー)、ICCにより、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポは再現性、一致度が高いことがわかり、個人特有の食行動を反映する指標であることがわかった。
背景
これまで「食べるのが早いか遅いか」は、主観的な印象によることが多く、食事調査でも自己申告に基づくケースが一般的で、客観的な測定はあまり行われてきませんでした。ビデオなどで測定していても、口元の動く回数で評価するなど、正確性に限界がありました。また、同じ人でも食べ物の種類によって食事時間が変わってしまう課題もありました。本学研究チームはこれまでに、ピザやハンバーグ弁当を用いて、食事時間や咀嚼回数には男女差がある一方で、咀嚼テンポ自体には差がないことを明らかにしています(Nutrients 2025, 17(6), 962; Nutrients 2025, 17(9), 1576)。しかし単回のテストでは「たまたま早い・遅い」ということが起こり得るのではと考えました。そこで今回は、より複雑な食品(鮭弁当:鮭と5つの副菜、ご飯)を用いて、食行動パラメーターの「個人内再現性」と「一致性(集団の中の順番)」を検討しました。
研究手法・研究成果
藤田医科大学で働く33名(男性15人/女性18人)を対象に、鮭弁当をテスト食として、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ、一口回数を測定しました。測定の方法はこれまでに報告したのと同じ方法※1で行いました。得られたデータについて、Bland Altman解析(%エラー)、intraclass correlation coefficient (ICC)を検討しました。同じ項目を測定したときの測定のばらつきを%エラーで、検者間・検者内信頼性をICCで評価した図を示します。%エラー20%以内、ICC0.7以上が良好とされますが、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポは男性でも女性でもほぼ良好な結果でした。ただし、一口回数(口に入れる食べ物の大きさに反比例)は特に女性では不安定な結果でした。
以上から、決まった内容の食事を食べると、食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ(1分間あたりの噛む回数)は再現されることがわかったので、個人特有の食行動を表現する目印として使用できます。

図:男性と女性の食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ、一口回数の再現性、一致性の検討
今後の展開
結論として、テスト食を用いた食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポの再現性および一致度は高い結果となりました。一方で、一口回数の一致度は低く、特に女性でその傾向が顕著でした。今後の研究では、テスト食における食事時間と咀嚼回数、また食事時間とエネルギー摂取量との間に相関があるかどうか、さらに7日間の食事記録を通じてそれぞれの食事での関連性も検討する予定です。本試験食の高い再現性と一致度を踏まえ、食事時間、咀嚼回数、および咀嚼テンポは、少なくとも一つのテスト食を用いて計測することで、個人に特有の食行動を示すパラメータとして利用できると考えられます。用語解説
※1 これまでの測定方法:食事時間はストップウォッチ、咀嚼回数、咀嚼テンポ、口に運ぶ回数は咀嚼計Bitescan(シャープ株式会社)で測定。
文献情報
論文タイトル
High Reproducibility and Agreement of Meal Duration, Number of Chews, and Chewing Tempo Measured with a Standardized Test Meal著者
出口香奈子1,池田健一郎1,2, 青嶋恵1,2, 平岩衣里1,2, 小野智咲女3、和田理沙子1、飯塚勝美1,4*所 属
1 藤田医科大学 医学部 臨床栄養学講座2 藤田医科大学 医学部
3 藤田医科大学 羽田クリニック
4 藤田医科大学病院 食養部 *責任著者


