プレスリリース

長時間・リアルタイムで心拍変動を可視化する新ソフトを開発

—患者ごとに最適化したアラートで状態変化の兆候把握を支援— 

藤田医科大学医学部情報生命科学講座 中野 高志准教授、小児科学講座 藤野 正之講師、宮田 昌史教授、吉川 哲史教授らの研究グループは、リアルタイムで長時間心拍を解析し、病気につながる指標を可視化する新しい心電図解析ソフトウェア「CODO Monitor」を開発しました。このソフトウェアは様々な心電図指標の短時間変動と長期間トレンドを同時に可視化できるだけでなく、患者に合わせたアラート機能を搭載しています。
この研究成果は今後、自律神経や心拍指標と疾患の関係を解明する重要な一歩となります。
本研究成果は、Top10%ジャーナルである国際学術ジャーナル「Journal of Medical Systems」で2026年1月29日(米国時間)に公開されました。

 

研究成果のポイント

  • 新しいクロスプラットフォームのリアルタイム心電図解析ソフトウェア「CODO Monitor」を開発しました。
  • 様々な心拍変動指標をリアルタイムに解析・可視化し、患者個人に合わせたアラート機能を実現しました。
  • 臨床応用上の利便性を高め、バイタルサイン管理と患者アウトカムの改善のための重要な⼀歩となります。


背景

新生児・小児・高齢者などの重症患者の管理において、血圧や心拍数などに表れる血液循環の微小な変化をリアルタイムで検出することは極めて重要です。心拍変動※1は自律神経、疾患や予後との関連が報告されており、ガイドラインでも重要な測定項目とされています。心拍変動から算出可能な指標は多岐にわたりますが、従来の心拍変動解析のフレームワークでは、多数の指標を同時に、かつ長時間リアルタイムで解析することは困難でした。そのため、患者さんの状態変化の兆候を把握するには限界がありました。
また、長期・短期の異なる時間スケールで心拍変動を可視化することもできていませんでした。特に小児患者では、心拍変動指標の個人差が大きく、全ての患者さんに共通するアラート基準を設定することが難しいという課題がありました。


研究手法・研究成果

これらの課題を克服するため、研究チームは心拍変動をリアルタイムにモニタリングする新しいフレームワークを開発し、「CODO Monitor」と名付けたクロスプラットフォームソフトウェアツールに実装しました。本提案システムの特徴は、次の4つの構成要素にあります。

1.適応的アラートアルゴリズム
患者自身の全データの統計分布(四分位範囲)に基づいて患者固有の閾値を動的に算出する「適応型アラートシステム」を開発。これにより、一人ひとりの状態に合わせたアラート閾値を設定し、異常値を効果的に検出することが可能になり、臨床現場のスタッフにおける、誤検知によるアラート疲れや見逃しを防ぐことができます。

2. ワークフロー統合型アーティファクト※2管理
治療や処置によるアーティファクトを除外し、イベント注釈機能を備えることで、データ品質の向上や事後解析への有用性向上を実現。
 
3.包括的な心拍変動指標の同時分析
心拍のリズムの変化を表す「時間領域指標(SDNN、RMSSD、pNN50など)」と、「周波数領域指標(VLF、LF、HFおよびそれらの比)」の両方を同時に分析・可視化することで、自律神経の働きを多角的に評価できるようになります。
 
4.マルチスケール可視化アプローチ
従来の心電図計を使用して、短期的な分単位の変動(即時の生理学的応答)と長期的な数時間のトレンド(自律神経状態の緩やかな変化)を並行して監視でき、患者の状態のより包括的な概観を提供します。
 
オープンデータベースで公開されている高齢者や若者の心電図データでの性能検証に加え、藤田医科大学病院に入院する24名の新生児患者からの心電図データを用いてベッドサイドで運用的に検証を行いました。特に新生児医療の現場では、超早産児の心電図は、頻繁な看護ケアや泣いて体を動かす影響を受けやすく、安定したデータを継続的に取得することが難しいという課題がありました。本システムは、ベッドサイドモニタから得られるデータの中から、ノイズの多い時間帯を除外し、心臓の働きを正確に評価するなど、こうした課題にも直接対応しています。

 

今後の展開

本研究成果によって、心拍変動のリアルタイムモニタリングが可能となり、患者のバイタルサイン管理の質を高めるとともに、心拍変動と疾患の関係解明に向けた重要な一歩が示されました。本システムは、解析性能だけでなく、臨床現場で実際に使えることを重視して設計されており、情報生命科学講座と小児科学講座の密接な連携による、藤田医科大学ならではの分野横断型研究の成果です。
今後は、他大学との共同研究を進め、多施設NICU(新生児集中治療室)における有用性検証を行うとともに、疾患・治療介入とHRV(心拍変動)指標との関係を解析することで、新たな診断・治療法の開発につなげていきます。また、より多くのHRV指標への対応、自動信号品質評価など、システムの高度化を進める予定です。さらに、大規模な臨床研究を通じて、患者転帰の改善につながるかを検証していきます。


用語解説

※1 心拍変動
心臓の拍動と拍動の間隔が毎回わずかに変化すること。一定のリズムで打っているように見える心臓の動きも、実際には自律神経の働きによって細かく調整されています。心拍変動を解析することで、自律神経のバランスや、体にかかる負担、ストレスの状態などを評価する手がかりとなります。

※2 アーティファクト
検査や測定の過程で生じる、本来の生体情報とは異なる不要な信号や乱れのことで、体の動きや電極のずれ、周囲の電気的な影響などによって発生し、測定データに誤差やノイズとして現れるもの。

 

文献情報

論文名

A Clinically Oriented Framework for Real-Time Heart Rate Variability Analysis: A Novel Approach to Personalized and Robust Monitoring


著  者

中野 高志1,2, *(*責任著者), 藤野 正之3, 宮田 昌史3, 吉川 哲史3


所  属

  1. 藤田医科大学 医学部 情報生命科学講座
  2. 藤田医科大学 精神・神経病態解明センター 計算科学部門
  3. 藤田医科大学 医学部 小児科学講座

 

DOI

https://doi.org/10.1007/s10916-026-02342-z


研究助成

本研究は、日本学術振興会による「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(JPJS00420240019)に採択された藤田医科大学「精神・神経病態研究拠点(Fujita Mind-BRIDGe)」の支援を受けて実施されました。

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