医療現場で求められる「やさしい日本語」

日本で暮らす外国人が増えるなか、医療機関を受診するときに大きな壁となるのが「ことば」です。通訳が配置されていない病院も多く、患者さん自身の日本語力に頼らざるを得ない場面が少なくありません。
「やさしい日本語」とは、外国人だけでなく、高齢者や子ども、聴覚や理解に困難がある方など、誰にとってもわかりやすい日本語のことを指します。文を短く区切る、結論を先に伝える、専門用語や難しい表現を避けるなど、ちょっとした工夫で「伝わる日本語」に変えることができます。

学生のうちから身につける大切さ

藤田医科大学では、将来の医療者を目指す学生が、患者さんとのよりよいコミュニケーションのために「やさしい日本語」を学ぶ授業を取り入れています。これは、単なる言葉の置き換え練習にとどまらず、「相手を理解したい」という姿勢=コミュニケーションのマインドを育むことを目的としています。
「ことばの壁」が低くなると、不安や緊張といった「こころの壁」も低くなります。医療者がやさしい日本語を使えるようになることは、患者さんにとって安心感につながるだけでなく、多文化共生社会の実現にもつながります。

授業の内容

授業はワークショップ形式で行われ、日本語を母語としない留学生(大学院生)や教員が、模擬患者(Simulated Patient:SP)として参加しています。プログラムは以下のように構成されています。
• 「やさしい日本語」が必要とされる背景を学ぶ
• 「やさしい日本語」の言い換え練習
 例)「飲酒はなさいますか?」 → 「酒を飲みますか?」
• シナリオ(捻挫による受診など)のもとロールプレイ
• グループやクラスでのディスカッションと振り返り

実際のやり取りを通じて、自分が工夫した表現がどの程度相手に伝わるのかを体感でき、模擬患者役からフィードバックを受けて理解を深めます。

学生の学びと今後の展望

授業を受けた学生からは、「自分では簡単な日本語だと思っても伝わりにくかった」などといった声が寄せられています。現在は、医学部1年基礎プレゼンテーション、医療検査学科・放射線学科・看護学科2年医療英語のカリキュラムの中で本プログラムを実施しており、今後は、全学での実施を検討しています。
また、この取り組みは、学生にとって実践的な学びの場であると同時に、留学生にとっても交流や教育経験の機会となっています。

藤田医科大学が目指すもの

「やさしい日本語」を学ぶことは、患者さんとの信頼関係を築き、誰もが安心して医療を受けられる社会を実現する第一歩です。藤田医科大学は、多文化共生の地域社会に貢献できる医療人を育成するために、今後もこの取り組みを発展させていきます。

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