分野紹介
本分野は、臨床工学技士として臨床業務を長年経験した教員で組織されています。
臨床では、医療機器が治療や診断に欠かせず、また、新しい技術が装備された最新機器への置き換えなどがあり、こうした機器を正しく取り扱うために臨床工学技士の役割分担は大きくなっています。このため、実務者とともに教育・研究が進められています。
つまり、本分野は、教育・研究ともに、大学病院の臨床工学技士と一緒に歩みつつあるのです。
現在は、大学からの研究助成を活かして、大学病院臨床工学部のスタッフと連携してVRを用いた教育ツールの開発研究を進めています。また、臨床工学技士の職能を最大化するための研究、体外循環実施記録を用いた疫学研究、ウェルビーイングのための社会ニーズに対応した社会実装研究、IoTによるセンシングデバイス研究などを行なっています。
臨床工学技士の職能を最大化するための研究やウェルビーイングのための社会ニーズに対応した社会実装研究では、関係する団体等からの共同研究や講演などの要請に積極的に応えています。
教育分野
体外循環、人工呼吸器などの生命維持管理装置を始めとした、臨床工学分野の基礎から専門的な講義を担当しています。また、学内実習では臨床工学に関連した専門科目実習を行います。病院での臨床実習の前に、基本的な臨床能力が備わっているかどうかを見極めなければなりません。基本的な能力だけでなく、コミュニケーションがとれる人材を育成することも重要な目的の一つです。臨床工学のOSCE(Objective Structured Clinical Examination)には、コミュニケーション能力も含まれており、メンバーを中心に企画しています。臨床工学を志す学生にとって重要な能力は、他者と協調して仕事をする能力であると考えています。
研究内容
体外循環が生体に及ぼす影響、麻酔関連補助業務やスコープオペレエーターなどの普及、臨床工学に関連した様々な研究が行われています(詳細な研究テーマは下記参照)。
学生は、いずれかの研究テーマを選択し、研究開発のスキルを身につけ、学術活動を行います。
メンバー
教員
医療検査学科
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Norihisa Kitamoto (Professor)
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Makoto Hibiya (Professor)
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TAKAYUKI NISHIGAKI (Associate Professor)
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Kazunori Kawaguchi (Assistant Professor)
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Yasuko Enya (Assistant Professor)
研究内容
北本憲永
・手術室に関連する新たな業務である麻酔関連補助業務とスコープオペレエーターなどの効果を全国に普及する研究を実施。
・人工心肺装置関連では、充填量の軽減と操作方法の工夫による無輸血無希釈体外循環を世界で初めて提唱し実現。さらに効果を向上させる研究を実施。
・体外循環操作方法では常温で正常の灌流指数で循環し血液希釈も行わない超低侵襲体外循環を提唱し実現。さらに効果を向上させる研究を実施。
日比谷信
安全な体外循環のためのベストプラクティス
・安全な体外循環のための標準化の調査研究(2015〜)
・体外循環症例登録データを用いた技術提供の現状評価(2015〜)
・体外循環が生体に及ぼす影響の客観的評価の研究(2015〜)
西垣孝行
ECMOの人工肺において結露対策専用に開発された温風装置の基礎研究と臨床評価
ECMOにおける人工肺の特性として、ガス相出口に結露水が発生し、ガス交換性能が低下するリスクがある。人工肺の結露対策は、ガスフラッシュ法や人工肺周囲を温風装置で加温する温風加温法などが報告されているが、標準化されておらず、インシデントに繋がるリスクがある。本研究では、臨床において人工肺ガス相入口圧を客観的指標として、新規開発した結露対策専用の温風装置の評価を実施する。大学では基礎実験により結露のメカニズムや温風装置のリスクを可視化する。研究データは、一元管理し、自由に多施設で比較検討できるネットワークを構築し、学会と連携してガイドラインの策定を目指す。
自宅用IoTテントサウナを用いたウェルビーイングの研究と社会実装
近年、サウナブームが到来し、さまざまなサウナ施設がOPENしている。またサウナ学会が立ち上がるなど、サウナの予防医療効果に関心が集まっている。一部の企業では、福利厚生として会社へのサウナ設置が進んでおり、健康経営としてのインパクトが報告され、サウナ部の設立も増加している。一方、女性のサウナ市場は、生理などを理由に公共施設の利用頻度が低くなることなどから、多くの施設が男性専用となっている。一部、PMSの改善を目的にしたサウナ利用など、女性にこそサウナが効果的であると示唆されるものの、女性を対象にしたサウナ施設が少なく、不明な点も少なくない。
我々は、女性に特化してサウナ研究を実施するために、大学内に自宅で容易にサウナが実施できるIESAUNAを設置した。また藤田医科大学の関係者を対象にサウナ部を立ち上げ、コミュニティの運営を開始した。現在実験設備を準備中であるにもかかわらず、女性をターゲットにしたサウナ研究は珍しく、さらに医科大学のポテンシャルから、さまざまな企業が、共同研究として興味を示している。
現在、①基礎研究の準備と②研究機材の確保、③研究資金の確保を並行して実施しながら、女性のサウナ市場を拡大すべく、④さまざまな企業と連携をとっている。サウナは、オープンイノベーションに最適なツールであることからも、新しい医工共創の方法論として、コンソーシアムを構築する。すでに複数の事業化アイデアプランが生じていることからも、研究・教育・社会実装を三位一体で、最大限に楽しみながら進める予定である。クラウドファンディングにて、命を支える医療者をサウナで支える、福利厚生で病院にサウナを届ける「病院サウナクーポン」プロジェクトを実施し、2024年12月末、目標金額を達成した。今後は、自宅用IoTテントサウナの研究開発および新しい女性向けのサウナグッズなど、ヘルスケア関連の商品開発に取り組む予定である。
川口和紀
Iot(Internet of Thing)センサを用いたインシデント軽減への取り組み
1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の事故には至らなかった事案が隠されているという「ハインリッヒの法則」が知られています。これは医療でも当てはまる法則であり、インシデントの軽減がアクシデントの防止に繋がると考えて、インシデントレポートから、対応策を考えIotセンサが適用できる事例に対してセンサシステムを構築し、臨床サイドに提案しています。
Iotセンサは、センサのみのタイプと異なり検知後の報知についての自由度が大きく人手不足や手順の簡略化に貢献できるのではないかと考えています。
・Iotセンサを用いた自己抜針防止システムの構築(2024:日本医工学治療学会 ポスター発表)
・圧センサによる転倒検知システム(2022)
・透析業務での投薬・採血チェックシステム(2023)
塩谷泰子
VRやAR(Augmented Reality) デバイスが開発されたことにより、没入体験型学習や仮想映像と現実世界を繋いだ学習が可能になりつつあります。視聴者が自由に視点を変えることができるため、撮影者中心の画像とは異なることや、他人の視野を共有できること、どこでも繰り返し体験できることなどから、VR技術を利用した医学的手技の獲得や知識の習得への応用が行われつつあります。体験できなかった状況を体験でき、医療水準と多職種連携を向上させることにも寄与するものと考えられますが、 まだ導入され始めたばかりで、その効果については不明な点が多くあります。
VRのニーズの把握、試験的にコンテンツを作成、評価を行い、新たな医療系教育ツールとしてのVRの可能性と有用性を検討します。
学術業績
原著論文
2024
- 今田 寛人, 渡邉 研人, 大石 杏衣, 西垣 孝行, 臨床工学技士在籍医療機関における輸液ポンプ・シリンジポンプの保有台数調査(アンケート調査による横断研究), 医療機器学 94(3), 297-305, 2024
2023
- 蔦村 琴子, 大橋 篤, 細江 眞生, 高須 立平, 石田 大賀, 新 典雄, 堀 秀生, 井平 勝, 川口 和紀, 中井 滋ら ビタミンE被覆血液透析濾過膜による血清アルブミンの酸化修飾抑制 .日本透析医学会雑誌 56(Suppl.1) 475-475 2023.05
- Yasuko Enya, Hiroyuki Hiramatsu, Masaru Ihira, Ryota Suzuki, Yuki Higashimoto, Yusuke Funato, Kei Kozawa, Hiroki Miura, Masafumi Miyata, Yoshiki Kawamura, Takuma Ishihara, Koki Taniguchi, Satoshi Komoto, Tetsushi Yoshikawa. Similarities in rotavirus vaccine viral shedding and immune responses in pairs of twins. Fujita Med J. 2023 Aug;9(3):253-258.
2022
- Midori Hasegawa, Nobuya Kitaguchi, Hajime Takechi, Kazunori Kawaguchi, Kengo Ito, Takashi Kato, Masao Kato, Norio Nii, Sachie Yamada, Atsushi Ohashi et.al Therapeutic Apheresis and Dialysis 26(3) 529-536 2022 Jun
- Enya Y, Kawamura Y, Ihira M, Hattori F, Nakai H, Nishimura N, Ozaki T, Higashimoto Y, Kozawa K, Miura H, Komoto S, Taniguchi K, Yoshikawa T. Correlation Between Rotavirus Antigenemia and Humoral Immune Response in Patients with Acute Rotavirus Gastroenteritis. Pediatr Infect Dis J. 2022 Dec 1;41(12):1004-1006.
2021
- Nobuya Kitaguchi , Kazunori Kawaguchi , Miwa Sakata , Hiroki Aoki , Kazunori Yamazaki , Megumi Kaneko , Jun Kinomura , Masao Kato , Midori Hasegawa , Nobuo Suzuki , Masao Mizuno , Yukio Yuzawa Aβ Influx into the Blood Evoked by Different Blood Aβ Removal Systems: A Potential Therapy for Alzheimer‘s Disease Neuropsychiatr Dis Treat. 2021 Jul 13;17:2291-2308.
投稿論文及び掲載冊子
2024
- 北本憲永. 【タスク・シフト/シェアで広がる医療安全の輪】臨床工学技士のタスクシフト・シェアへの実践と医療安全, 病院安全教育, 11(6) 21-26, 日総研(2024.6)
- 北本憲永. NOW臨床工学部 各地の特色ある組織づくり 多様な業務を行うため技士数の極めて多い病院 多様な業務を行うために-変わりゆく組織運営-. Clinical Engineering, 35(7) 595-600, Gakken (2024.7)
- 富永滋比古、太田早紀、北本憲永ほか:陰圧吸引補助脱血(VAVD)コントローラにおける特性理解の実験的検討. 体外循環技術, 51(2); 149-153, 2024
- 大橋 篤, 杉山 征四朗, 家入 璃穂, 高柳 綾子, 北本 憲永:用手洗浄の変更に伴う効果. 日本消化器内視鏡技師会会報 (72) 285-286 2024
2023
- 北本憲永. 【医師の働き方改革に伴うタスク・シフト/シェアへの取り組み】タスク・シフト/シェアを実施するために新規参入で考えること. Clinical Engineering, 34(7) 605-610, Gakken(2023.6)
- 北本憲永. 【これでわかる!心臓病の子どもの看護のきほん】治療の知識 人工心肺のしくみ . 小児看護 46(4) 407-412 (2023.4)
- 北本憲永.臨床工学技士による麻酔アシスタントとは. できるエンジニアといわれるために3年目までに知っておきたい112のこと. 196-199, 分担執筆 Gakken (2023.8)
- 北本憲永.人工心肺で使用する薬剤. できるエンジニアといわれるために3年目までに知っておきたい112のこと. 293-294, 分担執筆 Gakken (2023.8)
2022
2021
- 北本 憲永, 内山 明日香, 鈴木 克尚, 佐川 雅俊, 平松 和也, 山内 健至, 豊田 理水, 鳥羽 好恵, 小久保 荘太郎. 周術期の働き方改革(実践編) 臨床工学技士の取り組み. 日本手術医学会誌 42(2) 213-220 (2021.7)
学会報告
2024
- Norihisa Kitamoto. Clinical engineers in Japan: role in perioperative care and future prospects, International Conference on Anesthesia Patient Safety 2024, Tokyo Japan
- Yoshida T, Watanabe Y, Park Y, Sekikawa T, Kitamoto N, Aoki F, Nakamura H. "Novel Camera Navigation Training: A Prospective Study on Clinical Engineers National Training in Japan" ePoster presentation at the 2024 SAGES Annual Meeting; 2024 April 17-20; Cleveland, OH.
- 内山明日香,北本憲永,佐川雅俊 ,鳥羽好恵. 麻酔補助CEは麻酔科医の心理的安全性に影響を与えるか. 第34回日本臨床工学会, 2024.5 福井
- 川口和紀,道木綾香,新典雄,櫻井尚,塩谷泰子,日比谷信. 透析中の⾃⼰抜針を防ぐ 〜IoTセンサを⽤いて 第40回日本医工学治療学会学術集会 2024.05 愛知
2023
- 北本憲永.タスクシフト・シェアにおける臨床工学技士業務の課題への対応と方向性について 手術室業務におけるタスクシフト・シェアの課題と期待.第33回日本臨床工学会, 2023.7 広島
- 内山明日香, 北本憲永, 佐川雅俊, 鳥羽好恵.麻酔補助臨床工学技士(CE)と特定行為研修術中麻酔管理領域パッケージ終了看護師(特定看護師)の取り組み.第33回日本臨床工学会, 2023.7 広島
- 北本憲永.臨床工学技士を病院内で活躍するために~いざ!臨床の最前線へ~. 第61回全国自治体病院学会2023.8北海道
- 立石 実(聖隷浜松病院 心臓血管外科), 小出 昌秋, 木島 一美, 本田 勝亮, 堤 克成, 柏原 道志, 長岡 翔, 内山 明日香, 北本 憲永. 当院における多職種(看護師,薬剤師,臨床工学技士)で取り組むタスクシェア・タスクシフト. 第61回日本人工臓器学会2023.11 東京
- 北本憲永.直感的な操作感覚と自動制御~Technowood systemを使用して~第48回日本体外循環技術医学会2023.11 宮城
2022
- 北本憲永,内山明日香.CVSAP:医師のタスクシフト、臨床工学技士への期待 臨床工学技士によるタスクシフト・シェアへの挑戦 麻酔科医との協働. 第47回日本体外循環技術医学会2022.11 福岡
- 北本憲永.手術室タスクシフト・シェアを成果に繋げる 臨床工学技士の育成. 第14回日本医療教授システム学会総会2022.03 岐阜
- 北本憲永. 手術室業務が拡大した理由を考える.管理者の姿勢から. 第32回日本臨床工学技士会 2022.5 茨城
- 北本 憲永, 内山 明日香, 鳥羽 好恵他. 臨床工学技士を活用した麻酔補助業務への取り組み. 第33回日本臨床モニター学会2022.6 愛知
- 内山明日香, 鈴木克尚, 北本憲永. 働き方改革手術室臨床工学技士の取り組み 麻酔補助・スコープオペレーターへの参入. 第60回日本人工臓器学会2022.11 愛媛
- 北本憲永,鈴木克尚.臨床工学技士のスコープオペレーター病院内教育. 第35回日本内視鏡外科学会2022.12 愛知
- 北本 憲永, 増井 浩史, 富永 滋比古, 太田 早紀, 小出 昌秋. 体外循環中のDUF置換液の違いによる血糖と乳酸値の変化. 第58回日本小児循環器学会2022.07北海道
2021
- 北本憲永.体外循環管理の最高峰を目指して!第27回東海胸部人工臓器カンファレンス特別講演2021.9 愛知
- 北本憲永, 関川智重, 市橋孝章, 菊地徹, 藤田智, 佐々木慎理, 塚本真司, 笠野靖代. 法令改正が臨床工学技士の手術室業務をどう変えるか~創造する新たな業務展開~第31回日本臨床工学技士会 2021.5 熊本
- 川口和紀,山崎一徳,刑部恵介,杉本恵子,近藤彰,富田元,杉浦将人,竹差美紗子,宮本美穂,北村眞弓,世古留美,西山都師恵,武地 一. アイ・トラッキングを用いた初期MCI検出の検討 第10回日本認知症予防学会学術集会 2021.06月 横浜
- 北本憲永.人工心肺前輸血と人工心肺前後のpH管理の重要性. 第46回日本体外循環技術医学会2021.11 東京WEB
- 北本憲永.昔の研究開発を振り返り~医工連携という言葉がなかった時代~. 第46回日本体外循環技術医学会2021.11 東京WEB
- 塩谷泰子,河村吉紀,井平勝,平松裕之,鈴木竜太,東本祐紀,小澤慶,三浦浩樹,谷口孝喜,河本聡志,吉川哲史.急性ロタウイルス胃腸炎におけるロタウイルス抗原血症と抗体応答の関連性解析.日本ウイルス学会2021.11 兵庫
- 塩谷泰子,井平勝,服部文彦,東本祐紀,平松裕之,鈴木竜太,河村吉紀,小澤慶,河本聡志,谷口孝喜,吉川哲史. ロタリックス接種後の宿主免疫応答と便中ウイルス増殖の関連. 日本ワクチン学会2021.12 長野
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