プレスリリース

公衆衛生学 八谷寛教授が委員長を務める日本学術会議生活習慣病対策分科会が、生活習慣病予防に関する提言を発表しました

本学医学部公衆衛生学の八谷寛教授が委員長を務める日本学術会議生活習慣病対策分科会は8月11日、「生活習慣病予防のための良好な成育環境・生活習慣の確保に係る基盤づくりと教育の重要性」に関する提言を公表しました。

提言の背景

生活習慣病は、いまや日本人の死因や疾病負担の主要な部分を占めるまでになっています。とくに生活習慣の乱れ、代謝等の変化は幼小児期や胎児期にまで遡ることが知られ、早期からの根源的な対策が求められています。そこで日本学術会議生活習慣病対策分科会が以下の4項目を提言しました。

提言1

エコチル調査等のライフコース疫学研究の長期継続、幼小児期・若年世代を対象とした研究の充実(環境省・文部科学省・厚生労働省に対する提言)

  • 胎児期からの成育環境が子どもの健康に与える影響を明らかにしようとする「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、2010年度から開始され、13 歳までの対象児の追跡が予定されています。確立された研究基盤と貴重なデータの蓄積を活かし、少なくとも特定健康診査対象年齢である40 歳まで追跡を継続し、生活習慣病予防のための良好な成育環境、幼小児期からの生活習慣や健康状態等の影響を明らかにすべきです。
  • 幼小児期からの生活習慣等の実態を社会環境要因の変化の生体指標への影響も含めてモニタリングするために国民健康栄養調査の生活習慣調査や血液検査の対象年齢を20 歳未満にも拡大すべきです。

提言2

若年女性・妊産婦の栄養改善(厚生労働省・日本栄養士会に対する提言)

  • 学童・思春期、若年成人期にある若い女性(妊娠前)のやせ、妊産婦・授乳期の低栄養は、次世代にも悪影響を及ぼします。従来からこの点は指摘されていますが、改善が見られません。今までの取り組みを検証し、新規の精神心理的アプローチ、社会的アプローチ及び栄養学的実践法を統合した取り組みを開発し、その検証と普及が必要です。

提言3

地域・学協会等と連携した学校での健康教育の深化、高校卒業後以後の健康教育の機会保障(文部科学省・厚生労働省に対する提言)

  • 成育過程の各段階にある全ての子供に、切れ目のない医療・教育・福祉を提供することの重要性と、国や地方公共団体、関係機関の責務を定めた成育基本法の理念に基づき、学校を核とした地域のヘルスプロモーションを推進すべきです。
  • 学校は、地域の保健医療機関との連携や、学協会等の協力を得て健康教育・保健活動を充実すべきで、国は学協会等との連携や学校保健活動を促進すべきです。
  • 地域(母子)保健・学校保健、その他の個人の健康に関する記録・データが統合的に管理され、個人が長期にわたり自身のデータを利用できるシステムを早期に実現すべきです。
  • 高校卒業後以降の若年成人期には、健康教育が十分なされていません。大学での健康教育の必修科目化や入社オリエンテーション、成人式などで健康への関心を喚起し、知識だけでなく実践力をともなう正しい食育・健康教育の機会が広く設けられるべきです。
  • 教員養成課程必修科目、全現任教員必須研修に学校保健を位置付けることを検討すべきです。

提言4

医学部における栄養・身体活動・生活指導教育の強化(文部科学省・厚生労働省に対する提言)

  • 医師によって行われる患者等への生活指導、また学校等での生活習慣病予防活動への積極的関与の必要性・重要性が指摘されていますが、医学部における生活指導等に関する教育は十分でありません。卒前の医学教育プログラムに、生活習慣病の予防のための栄養・身体活動・生活指導に関する内容の講義・実習を、医学部授業に系統的に取り入れられるよう文部科学省は各大学の医学教育プログラムを指導し、共用試験CBT・OSCEや医師国家試験において評価を行うべきです。