プレスリリース

アプリ型報告収集システム導入による中小医療機関への効果を検証

本学 医療の質・安全対策部医療の質管理室は、ストップイットジャパン株式会社(東京都中央区 代表取締役 谷山 大三郎 以下ストップイットジャパン社)と共同で、中小の医療機関に向けたアプリ型報告収集システムを構築し2021年1月4日に契約を締結しました。地域の医療機関にご協力いただき、本システムを用いた「中小規模医療機関への導入効果に関するクラスターランダム化比較試験」を実施します。

背景および目的

新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延により、医療機関の患者安全への関心がこれまで以上に高まっています。しかしながら、患者安全に対する研究の多くは大病院が対象となっており、中小医療機関を対象とした多施設研究はほとんどありませんでした。本研究により、日本の中小医療機関における患者安全の現状を明らかにし、それらを改善することで地域全体の医療の質向上をめざします。 


研究のポイント

  • 本システムは、学校教育現場でいじめ防止のために活用されている匿名報告相談システムを中小の医療機関向けに改変したもので、スマートフォン、タブレット端末などで使用できるSTOPitアプリと、PC上で報告を収集する管理システムのSTOPit Adminで構成されます。報告者目線では必要な項目を入力するだけで場所を問わず匿名で報告でき、管理者目線では簡単に分類・分析につなげられるのが特長です。
  • 藤田あんしんネットワーク※1に加盟する地域の中小医療機関に対し、研究への参加協力を要請しました。参加に応じていただいた医療施設に1年間(後期群は半年間)、無料でシステムを提供します。
  • 2月24日時点で約15施設が参加。精度を高めるため、研究開始後も引き続き募集を継続します。
  • 研究は、参加医療機関をランダムに前期群と後期群の2グループに分け、前期群は最初から、後期群は6カ月後から本システムを使用し、導入による医療の質や安全文化の向上における効果を比較します。各機関から報告された情報は、本学医療の質管理室で分析し、参加機関へ定期的にフィードバックするとともに、改善に向けた助言を行います。
  • 災害発生時や新型コロナウイルス蔓延下の院内連絡等、危機管理にも活用いただけます。

報告対象となりうる組織内事象

  1. 医療事故およびヒヤリ・ハット事例
  2. 職員からの困りごと相談
  3. 患者さんや家族からのご意見
  4. 業務上の気づきや改善提案
  5. 各部門、部署の職員からの情報提供
  6. その他、組織の質向上に資する情報 など




※1 藤田あんしんネットワーク
本学は培ってきた医療安全のノウハウを地域の医療機関と共有し、医療機関・地域住民双方の「あんしん」をサポートすることを目的として2016年3月に発足しました。医療事故対応や院内感染に関する相談・支援および研修を行い、2月末現在、約250の医療機関にご加盟いただいています。新型コロナウイルス蔓延下においては感染防止対策の支援や、院内感染発生時における危機管理の支援も行っています。


組織で起こるさまざまな事象を収集・分析し、改善へとつなげます

安全な医療を提供するためには、組織で起こる様々なインシデントや気づきを現場が速やかに報告し、それらの収集・分析を通じて改善につなげることが大切です。しかし、従来の書面による報告は記入に時間がかかり件数も伸びないことから、傾向分析にまで至っていないのが現状です。当地域の中小医療機関の多くは、患者安全への意識が非常に高いこともあり、本システムを共有することで多くのデータが集積され、それらを反映することで地域全体の患者安全・医療の質向上につながると考えます。


〈見込まれる効果〉
  • 報告数の増加
  • 報告・連絡・相談の習慣の定着
  • 懲罰的でなくシステム思考で対応する手法の体得 
  • 組織の安全文化の向上 等