フジタDictionary -Chapter.01-


「心不全(しんふぜん)」の

 サインと予防法を知ろう


心不全で苦しむ男性の写真

テレビや新聞でもよく目にする「心不全(しんふぜん)」。聞いたことはあるけれど、どんな病気かよくわからない…という方も多いのではないでしょうか?
今回は、心不全の初期症状と、注目の「心臓リハビリ」について、わかりやすく解説します。

心不全とは?

私たちの心臓は、全身に血液を送る「ポンプ」のような働きをしています。このポンプの力が弱くなり、必要な血液を十分に送り出せなくなった状態が心不全です。

元気な心臓と弱った心臓のイラスト
 
例えば、ゴム風船を思い浮かべてみてください。最初は弾力がありますが、何度も膨らませたり無理に引っぱったりすると、ゴムが伸びきって、元に戻らなくなってしまいますよね。実は、心臓もこれと同じような性質を持っていて、頑張りすぎると心臓の筋肉が弱ってしまうのです。

心臓の筋肉が弱ってしまうと、傷んだゴム風船のように伸び縮みしなくなり、ポンプの役割を果たせなくなります。だからこそ、「ゴムが伸びきってしまう前」に治療を始めることが大切なのです。

見逃さないで!心臓からの小さなサイン

心臓に不安を覚える人とイエローカードを出す医者のイラスト

人間の体はとてもよくできていて、心臓の働きが落ちてきても、自分でなんとかカバーしようとします。例えば、血管を広げて血液の流れをスムーズにしたり、心拍数を上げて血液を送り出す力を補ったり——こうした仕組みを「代償機転(だいしょうきてん)」と呼びます。

代償機転のおかげで、心臓のポンプ機能が少し弱くなっても、症状に気づかないまま過ごしてしまう方は多くいます。しかし、この状態が続くと、心臓は代償することに疲れてしまい、ちょっとしたきっかけで、突然病状が悪化してしまうことがあります。救急車で運ばれて初めて、実は心臓の病気だった——とわかることが珍しくないのです。

だからこそ、「なんとなく疲れやすい」「動くと息切れする」などのサインを見逃さないことが大切です。心臓のゴムが伸びきる前に、できることはたくさんあります。早めのチェックと、早めの対策を心がけましょう。

心不全を引き起こす“きっかけ”とは?

心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な血液をうまく送れなくなる状態です。実はこの心不全、ある日突然起こるというよりも、日常生活の中の小さなきっかけが引き金となって発症することが多いのです。

主な要因

  1. 塩分の摂りすぎ
    塩分は体に水分をため込む原因となり、心臓に負担をかけます。外食や加工食品には想像以上に多くの塩分が含まれているので、知らず知らずのうちに摂取量が増えてしまうことがあります。
  2. 薬の飲み忘れ
    糖尿病・高血圧・高コレステロール血症といった生活習慣病の治療薬の飲み忘れには注意が必要です。薬を飲み忘れることで、持病の症状が悪化し、心臓への負担が増えてしまいます。
  3. 腎機能の低下
    腎臓の働きが悪くなると、体内の水分や塩分の調整がうまくいかなくなり、心臓にも負担がかかります。腎不全まで進行していなくても、軽度の機能低下がきっかけとなることがあります。
  4. 運動不足・寝不足・精神的ストレス
    これらはすべて、心臓にとって「じわじわ効いてくる」負担です。運動不足は体力の低下を招き、寝不足やストレスは自律神経や血圧に悪影響を与えるため、心不全リスクを高める要因になります。
  5. 風邪(感冒)などの軽い感染症
    一見ささいな風邪も、体力が落ちているときや心臓に負担がかかっているときには、心不全を誘発する引き金になります。特に高齢者や基礎疾患のある方は注意が必要です。

心不全は「治療中の病気がある人だけのもの」ではありません。普段の生活習慣の中にも、リスクの芽が潜む身近な病気なのです。

心臓を守る鍵は「心臓リハビリテーション」

仲良くウォーキングする老夫婦のイラスト

心臓の病気を予防し、再発を防ぐための大切な取り組みが「心臓リハビリテーション」です。これは、病院で行うリハビリに限らず、生活指導の一環として日常の中でも取り組むことができます。ポイントは、“無理のない範囲で体を動かす”こと。適度な運動によって、運動能力やからだの調節機能が向上し、心臓の機能が良くなります。
ここでは、家庭でも取り入れやすい簡単な運動を紹介。
  • 普段より少し速めのペースで歩くウオーキング
  • エレベーターの代わりに階段を使う
  • 椅子を使った立ち座り運動
  • その場でかかとを上下させる運動
継続することで、体力がつき、息切れしにくくなるなどの効果が実感できるはずです。日々の小さな積み重ねが、心臓の健康を守る大きな力になりますよ。まずは週に2~3回、無理のない範囲から始めてみましょう。
「心臓リハビリ」には、運動だけではなく、1.バランスのとれた食事をすること、2.減塩を心がけること、3.禁煙などの心不全を予防する対策すべてが含まれます。

禁煙とバランスの良い食事をする人のイラスト

心不全は、誰にでも起こりうる病気ですが、早く気づけば、防げる可能性は高まります。
体の小さな変化に気づいたら、あなどらずにチェックを。
そして、心臓を守る第一歩として、「心臓リハビリ」に取り組んでみてください。

この記事の監修は…

藤田医科大学 井澤英夫教授の写真

藤田医科大学 循環器内科学 井澤英夫教授
専門は心不全、心筋症、高血圧。
名古屋大学医学部卒業後、臨床と教育の両面で豊富な経験を積み、2020年より現職に。患者さんに寄り添う姿勢を大切にし、若手医師の育成にも情熱を注いでいます。
井澤教授の最近の楽しみは、国内旅行。コロナ禍をきっかけに、日本各地に目を向けるようになったそうです。なかでも印象に残っているのは長崎県壱岐島で、新鮮な海の幸を存分に味わい、大満足の旅だったとか。時間を見つけて、まだ足を運んだことのない日本各地を巡りたいとお話していました。

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