フジタDictionary -Chapter.03-


「嚥下障害」 ってなに?

“食べる・飲む”の大切なお話


老人が家族と食事を楽しむイラスト

食事は、日々の楽しみであり、健康を支える大切な生活行動です。 
しかし、高齢や病気の後遺症などで「飲み込みにくい」「むせやすい」などの症状が出る人も少なくありません。こうした状態を「嚥下障害(えんげしょうがい)」といい、放置すると誤嚥性肺炎や栄養不良の原因になります。 
最近、食事のときにむせやすくなった。入院をきっかけに、体力が落ち食事がのどを通りにくくなった。そんな小さな変化や不安を感じている方、嚥下障害でお悩みの方へ。 本コラムでは、食べる楽しみをあきらめずにすむためのヒントをお伝えします。

嚥下の仕組みと、障害が起こる理由

正常な嚥下と誤嚥を表した図

食べ物は「口腔→咽頭→食道」を通って胃に届きます。この複雑な動きを「嚥下(えんげ)」と呼びます。
加齢や脳卒中、神経疾患、口腔機能の低下などが原因で、この動きがスムーズにいかなくなると、誤って気管に入る(誤嚥)危険が生じます。
この時、食べ物や飲み物、唾液と一緒に細菌が気管から肺に入ってしまうと、肺が炎症を起こし「誤嚥性肺炎」などの疾患を引き起こす原因となります。
嚥下障害がある人にとっては、“一口の食事”が命に関わることもあるのです。

嚥下食とは——安全とおいしさの両立をめざして

嚥下食は、飲み込みやすく加工された食事のことで、粘度や形状を調整し、誤嚥を防ぎながら十分な栄養をとれるように作られます。
最近では、ムース状やペースト状でも見た目や味を損なわない調理法が開発され、「食べたい」気持ちを引き出す調理の幅が広がっています。
医療現場では、「嚥下調整食分類2021(日本摂食嚥下リハビリテーション学会基準)※」に基づき、とろみや硬さなどを段階的に変えながら、“口からおいしく栄養をとる”ことを大切にした嚥下障害へのケアが進められています。

※『嚥下調整食学会分類2021』を参考に作成した図です。 図の理解にあたっては『嚥下調整食学会分類2021』の本文をお読みください。
※『日摂食嚥下リハ会誌25(2):135–149, 2021』 または 日本摂食嚥下リハ学会HPホームページhttps://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf『嚥下調整食学会分類2021』 を必ずご参照ください。

おいしそうな嚥下食のイラスト

藤田医科大学の各病院では、嚥下機能に障がいのある方も安全に食事を楽しめるよう、医学・栄養・調理の専門職がチームとなり、食材の形やとろみ、味付けなどに工夫を重ねた嚥下食を開発・提供しています。
口から栄養をとることは、栄養補給だけでなく、咀嚼や嚥下機能の維持、消化器系や脳の活性化、免疫力向上のほか、おいしく・楽しく食べることで心が満たされ、日々の活力を得られます。
つまり、食べることは生命維持だけでなく精神的にも重要なのです。

“おいしい嚥下食”を病院以外でも

藤田医科大学では、QOL(生活の質)向上に向けた栄養療法で患者さんの回復および社会復帰を支えています。 
 
退院後、「家族全員で同じテーブルを囲みたい」「病院のおいしい嚥下食を自宅でも楽しみたい」という患者さんの声に応えるため、自宅でできる嚥下食レシピの動画を配信。また、藤田医科大学七栗記念病院(三重県津市)監修の嚥下食の食事プランを近隣の福祉旅館「榊原温泉 湯の瀬 ラムちゃんパーク」で提供するなど、外に出て、食べる楽しみを取り戻す取り組みも進めています。 

「食べること」は生きる力

老人が家族と食事を楽しむイラスト

「食べる」機能は人が生きてくうえで最も大切な力の一つです。
その機能をできるだけ保ち、おいしいと感じながら食事を楽しむことが、日々を元気に過ごす源になります。外出して食事をしたり、家族と食卓を囲んだりする時間は、社会とのつながりを育み、生きる意欲を取り戻すリハビリにもつながります。

この記事の監修は…

藤田医科大学 大高洋平教授の写真

藤田医科大学 七栗記念病院 病院長
藤田医科大学 リハビリテーション医学 教授
大高 洋平 教授

専門はリハビリテーション一般、脳血管障害、ロボットリハビリテーション、転倒予防など。

慶應義塾大学医学部卒業後、臨床・教育・研究の第一線でキャリアを重ね、2019年にリハビリテーション医学教授、2024年に七栗記念病院 病院長に就任。

「歩く」「食べる」「考える」といった、人の基本的な営みである「活動」に焦点を当てる医学に強い魅力を感じたことが、この道に進む原点になったそう。

超高齢社会という、これまで人類が経験したことのない課題に直面する中で、単なる長命ではなく「長寿」をいかに実現するか。その問いに対し、病理と社会の間にある「活動」を軸に据えたリハビリテーション医学を「活動の医学」として位置づけ、真正面から挑み続けています。

そんな大高病院長は、日本温泉気候物理医学会認定 温泉療法医の資格を持つほどの温泉好き。時間ができると、最寄り駅にできた銭湯にお子さんたちと通い、親子のひとときを楽しんでいるそうです。

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