プレスリリース

世界初 国産手術支援ロボット「hinotori™」による 胃がん切除手術1例目を実施しました

藤田医科大学病院総合消化器外科(愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98 主任教授:須田康一)は11月2日、国産初の手術支援ロボット「hinotori™サージカルロボットシステム」(以下「hinotori™」)を用いた第1例目の胃がん切除手術を実施し、無事終了したことをご報告いたします。泌尿器科領域以外でのhinotori™による手術は、世界初となります。

hinotori™による手術(以下hinotori手術)は、2020年8月に泌尿器科領域において薬機承認され、同年9月に保険適用となりました。消化器外科領域においては、2022年10月に婦人科領域とともに薬機承認され、今年12月より保険診療を開始します。

患者さんは70代の女性で、手術後の体調も非常に安定しています。
執刀した先端ロボット・内視鏡手術学の宇山一朗教授は、「既存の手術支援ロボットと操作性に遜色なく、順調に進められた。泌尿器科領域に加え、消化器外科および婦人科領域でもhinotori™による保険診療が始まることで、間口が広がり、より多くの患者さんに貢献できると考える」と手応えを話しています。

  • hinotori™による胃がん切除手術の様子。外科医・麻酔科医・看護師・臨床工学技士等、多職種の医療者がチームで取り組みます。

  • 執刀医は手術台から少し離れたコックピックに座り、遠隔でアームを操作します

背景

2008年、全国に先駆けて手術支援ロボット「ダビンチ」を導入した藤田医科大学病院は、ロボット支援手術において国内トップクラスの実績を誇ります。hinotori™の実用化に向けての研究開発にも取り組み、2021年1月にはhinotori™のトレーニングおよび遠隔手術等の研究・実証実験を行うメディカロイド社との共同研究施設「メディカロイド インテリジェンス ラボラトリー 名古屋(略称:MIL-Nagoya)」を学内に開設。臨床現場への導入に向け、操作性改善や機能拡充に取り組んできました。
消化器外科領域におけるhinotori™手術については、ダビンチによるロボット支援手術や2020年9月に保険適用になった泌尿器科領域のhinotori™手術と同様、厚生労働省の監督下において安全な導入・普及のための厳格なルールが定められています。安全性を担保するため、日本内視鏡外科学会が消化器外科領域における指導者(proctor)を認定し、hinotori™手術が保険適用された場合でも導入時はproctorの立ち会いのもとでなければ運用できないことになっています。しかし、最初のproctor取得要件を満たしているドクター (消化器外科領域でhinotoriの開発に多角的に貢献してきたドクター)は、現段階で国内・国外を含めて藤田医科大学消化器外科の4名(宇山一朗教授、須田康一主任教授、柴崎晋准教授、中内雅也准教授)を含むごく限られた人数しかいません。全国にはすで30台以上のhinotori™が導入され(11月2日現在)、hinotori™を使わなければロボット支援手術を受けられない患者さんが潜在的に数多く待機されています。胃がんの患者さんにロボット支援手術のアドバンテージを少しでも早く享受していただけるよう、今後も当院では患者さんの体への負担が少ない本手術を推進し、医学の発展に寄与することをめざします。

本学のhinotori™所有台数

本学の所有台数は現在、MIL-Nagoyaに1台、藤田医科大学病院に1台、藤田医科大学岡崎医療センターに1台となっており、これら3施設を10Gbpsの専用回線でつないだ遠隔手術の実証実験にも2021年5月より取り組んでいます。

年間100件を超える胃がん手術

藤田医科大学病院消化器外科では、年間100件を超える胃がん手術を実施しており、そのほぼ全てがロボット支援下によるものです。ロボット支援手術は開腹手術に比べ患者さんの体への負担が少ないため、進行がんに対しても可能な限りロボット支援下で行い、術後QOLの向上を図っています。

国産手術支援ロボット「hinotori™」

株式会社メディカロイドが開発した国産初の手術支援ロボットシステムです。手術器具や内視鏡を取り付けた4本のアームが特徴で、医師は患者さんの体から離れたコックピットで内視鏡の立体画像を確認しながら遠隔でアームを操作して手術をします。