プレスリリース

凍結融解胚盤胞移植における回復培養に関する 多施設共同ランダム化比較試験を開始

 
藤田医科大学東京 先端医療研究センター(東京都大田区)の小林達也准教授(生殖補助医療管理胚培養士※1)と、浜谷敏生教授(生殖医療専門医)らの研究グループは、生殖補助医療※2における凍結融解胚移植※3の回復培養※4に関する多施設共同ランダム化比較試験(RCT)※5 GSET–study (ジーセット スタディー、GM–CSF Stimulated Embryo Transfer–study)を開始しました。
本試験では、サイトカインの一種であるGM–CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)※6を含む胚培養液を用いる群と非含有培養液を用いる群を比較し、生児出生率を主要評価項目として評価します。

本研究では下記国内6施設で約750名の患者さんの組み入れを予定しています。今後、新たに国内の不妊診療クリニック3施設を追加し、研究を継続していきます。
※ 〈国内6施設〉 藤田医科大学東京 先端医療研究センター 羽田クリニック(東京都大田区 教授:浜谷敏生)、藤田医科大学病院(愛知県豊明市 教授:西澤春紀)、高橋ウイメンズクリニック(千葉県千葉市 院長:高橋敬一)、矢内原ウィメンズクリニック(神奈川県鎌倉市 院長:矢内原敦)、新橋夢クリニック(東京都港区 院長:瀬川智也)、神奈川レディースクリニック(神奈川県横浜市 院長:山本篤)

本研究の詳細な方法は、2026年3月13日に学術誌「Trials」に掲載された「Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor-containing medium for blastocyst recovery culture: study protocol for a randomized controlled trial (GSET-study)」で発表されました。
 

研究成果のポイント

  • 胚盤胞※7融解後の回復培養を検証する多施設共同ランダム化比較試験を実施している。
  • 周産期合併症や新生児アウトカムも含めて事前に試験計画を設計し、信頼性の高いエビデンス構築を目指す。
  • 妊娠転帰の中で重要である生児出生率を主要評価項目※8として評価する。
  • 本学橋渡し研究シーズ探索センター(菊地佳代子 特任教授)の協力のもと、研究を遂行している。


 

背 景

体外受精などの生殖補助医療では凍結融解胚移植が広く行われています。日本では年間約26万件の凍結胚移植が行われており、その約8割が胚盤胞の移植です。しかし、胚盤胞移植あたりの生児出生率は約30~60%にとどまっており、成功率の向上が重要な課題となっています。
GM–CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)は、女性の卵管や子宮内膜から分泌されるサイトカインの一種で、胚の発育や着床を助ける働きがあると考えられています。本研究では、凍結融解胚盤胞の回復培養におけるGM-CSF含有培養液の使用について、前向きに比較検証します。


研究手法

本研究は、日本国内6施設で実施される多施設共同ランダム化比較試験(RCT)です。対象は30~39歳の不妊症の方で、凍結融解胚盤胞移植を予定している約750名を予定しています。参加者は、回復培養に使用する培養液について、GM–CSF含有培養液または非含有培養液のいずれかにランダムに割り付けられます。
主要評価項目は生児出生率で、その他の妊娠転帰、周産期合併症、新生児関連情報などを事前に定めた評価項目として収集します。
なお、本研究は現在進行中であるため、現時点で本試験の有効性や安全性についての結論は出ていません。
 
 

今後の展開

本試験は、あらかじめ定めた研究計画に基づいて継続されます。研究成果は、試験終了後に学会発表および査読付き学術誌等を通じて公表する予定です。
本研究に関する試験情報は、臨床研究等提出・公開システム(jRCT)および study protocol 論文に公開されています。
jRCT番号:1040240159


用語解説

※1 胚培養士
体外受精などの生殖補助医療において、卵子や精子、胚を扱う専門職。受精操作や胚培養、胚の評価、凍結保存など、胚の発育を支える重要な役割を担う。

※2 生殖補助医療(ART:Assisted Reproductive Technology)
体外受精や顕微授精など、医療技術を用いて妊娠を助ける治療の総称。卵子や精子を体外で扱い、受精や胚の発育を補助することで妊娠成立を目指す。

※3 凍結融解胚移植
生殖補助医療で得られた胚を凍結保存し、後日融解して子宮に移植する方法。現在の生殖補助医療では広く行われている。

※4 回復培養
凍結保存していた胚を融解した後、胚移植まで培養する操作のこと。融解による影響から胚の状態を回復させ、移植に適した状態に整えることを目的として行われる。

※5 ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)
研究参加者を無作為に複数の群に分けて治療法などを比較する臨床研究の方法。治療効果を検証するうえで最も信頼性が高い研究デザインとされる。

※6 GM–CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)
免疫細胞の増殖や分化を調節するサイトカインの一種。女性生殖器でも分泌され、胚発育や着床に関与すると考えられている。

※7 胚盤胞
受精後約5~6日で形成される発生段階の胚。将来胎児になる細胞と胎盤になる細胞が分かれ始める段階で、体外受精ではこの段階で子宮に移植することが多い。

※8 主要評価項目
臨床試験において、研究の効果を評価するために最も重要と位置づけられた指標。試験の目的に基づいて事前に設定される。
 
 

論文情報

論文名

Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor-containing medium for blastocyst recovery culture: study protocol for a randomized controlled trial (GSET-study)

著  者

小林達也1,2、樋口香子2、菊地佳代子3、西澤春紀4、浜谷敏生2,5 ほか

所  属

1 藤田医科大学 医療科学部 研究推進ユニットレギュラトリーサイエンス分野
2  藤田医科大学東京 先端医療研究センター 羽田クリニック
3  藤田医科大学 橋渡し研究統括本部 橋渡し研究シーズ探索センター
4  藤田医科大学 医学部 産婦人科
5  藤田医科大学 医学部 臨床再生医学講座

DOI

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