ロールモデル第6弾:佐野佳奈先生 医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学

インタビュー実施日:2026.2.17

ママ医師特集

女性医師  専門医への挑戦 子育てとキャリアの両立

子育ても、医師としての成長も。
“今の自分らしい働き方”を選ぶということ。

佐野佳奈先生プロフィール写真

佐野佳奈

藤田医科大学 医学部
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
2022年 藤田医科大学医学部医学科 卒業
2024年 藤田医科大学 医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 配属
2025年 産休・第一子出産(育休7カ月取得)
2025年 復職(時短勤務)

耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の医師として研鑽を積みながら、生後11カ月の男の子の子育てにも全力で向き合う専攻医の佐野先生。出産を経て時短勤務を選択し、家族や医局のサポートを得ながら、自分らしい働き方を模索されています。

妊娠中の葛藤、育休からの復帰、不安との向き合い方、そして限られた時間の中で仕事の質を高める工夫とは——。
子育てと医師としてのキャリアの両立を目指す未来の医師・若手医師に向けて、リアルな経験と思いを語っていただきました。

インタビュー風景

キャリア形成と出産までの道のり

医師志望のきっかけは何ですか?
母が看護師として大学病院で働いており、子どもの頃から医療職が身近な存在でした。母が大学病院に通いながら子育てをしている姿がかっこいいと感じ、医療職を志すようになりました。
耳鼻咽喉科を選んだ理由を教えてください
研修医時代のローテーションで、働き方など 将来のことも見据えて耳鼻科が適していると思い決めました。耳鼻科は手術の種類が多様で、良性疾患から悪性腫瘍まで幅広い疾患に対応でき、手術時間も1時間から10数時間かかるものまであり、ライフイベントに合わせ、長く働くことができない時期は手術の時間が短い患者さんを主に担当するなど、限られた時間でも手術も担当できます。「手術」「病棟管理」「外来」のバランスが良く、常に学び続けられる環境が魅力です。今思うと、耳鼻科を選んだのは人生で一番の転機です。子育てとの両立という観点から、自分の人生のステージに応じて仕事内容を調整しやすく、ライフワークバランスを重視する医師にとって、非常に働きやすい環境だと思います。
耳鼻咽喉科の特徴について詳しく教えてください
手術については外切開がメインの頭頸部外科、内視鏡を使った鼻の手術、顕微鏡を使った耳の細かい手術など、多種多様な手術があります。疾患自体も、アレルギーやめまいといった良性疾患から手術が必要な重症疾患まで、幅広い患者さんを診ることができます。 どの診療科に行こうか迷っている方には良い選択肢だと思います。
妊娠中、出産前はどのような働き方をしていましたか?
当直も含めて妊娠前と同じペースで仕事をしていました。しかし妊娠初期のつわりの時期に無理をして仕事をたくさん引き受けた結果、他の医局員に迷惑をかけた経験から、母親業との両立のため、自分で線引きすることの大切さを学びました。
仕事の線引きをする基準は?
家族でアスレチックに出かけた様子 抱える仕事の量を制限すること、そして病棟で急変する可能性のある重症患者さんの主治医の数を制限させていただくこと、助手として入る手術は代わりが利くので、そういった代替の利く手術を優先することです。外来の業務なら帰宅時間を調整しやすいため、現在は外来患者さんを主に担当しています。

育休と復帰の決断

育休をどのくらい取得されましたか?
生後7カ月で職場に復帰しました。現在は専攻医という立場なのもあり、育休中は周りから置いていかれるのではないかという焦りがあり、1年取得するという選択肢はなく、最初は出産後すぐの復帰を考えていました。しかし、実際に育児をしてみると保育園への送り迎えや授乳など難しい場面が多くありました。また、子どもの母親は私しかおらず、成長を見届けたいという気持ちもあったので、子どもがハイハイをするようになり、保育園で自分で遊んで楽しめる月齢になった生後7カ月のタイミングでの復職を選びました。
復職する際、ご主人との間で話し合いはありましたか?
夫も医師ですが、育児を主体的にしてくれています。最初は子どもとの時間を重視して私に育休を1年間とってほしかったようです。医師としてのキャリアを離れることの不安を打ち明けたところ、同じ医師であるためその理解を得ることができ、数カ月の折り合いをつけて、生後7カ月での復帰に至りました。
育休中に感じた不安はありましたか?その不安をどのように乗り越えましたか?
家族でアスレチックに出かけた様子 育休中は育児に専念する一方で、仕事から遅れをとるのではないか、復帰後に忘れていることが多いのではないかという 焦りが大きかったです。 復帰のタイミングは大学時代の部活の先輩に相談していました。 実際に仕事に飛び込んでみると、周りに置いて行かれるという不安はだんだんなくなりました。 心配していたよりも仕事を思い出すことができ、実践することで不安が解消されました。 とりあえず復帰してみることが、不安を取り除く最大の方法でした。

時短勤務と職場環境

時短勤務はいつから始めましたか?現在の勤務時間は?
2025年10月の復帰時から時短勤務を開始しました。医局内ではだいぶ久しぶりの時短勤務の取得者となります。現在は週20時間のフレックス勤務で、決まった時間ではなく週の中で帳尻を合わせています。2月中に週30時間への増加を計画しています。フルタイムに向けて少しずつ勤務時間を伸ばしているところです。
今の働き方に至った経緯は?
保育園入園3カ月目となる12月は、感染症が流行する時期でもあり、私の子どももインフルエンザに罹患したり、中耳炎を発症したりなどでほぼ出勤できませんでした。その経験から、講座教授が時短勤務の中でも少なめの業務から始めて、段階的に仕事を増やしていきましょうと提案してくださいました。他の医局員の先生方も私の働き方について理解を示してくださり、子どもが発熱して帰らないといけない時には早く帰れるような環境です。
医局のサポート体制は?
教授を含めた上司が理解を示してくれ、毎年新しい医局員が入局しているため人手不足もなく、快く帰宅できるよう声をかけてくださいます。できることだけやってくれたらいいよ、というスタンスでいてくれて、同期や後輩も子どものお迎え時間を理解してくれています。子どもがインフルエンザなどにかかっても、医局員のサポートのおかげで、子どもにしっかりと寄り添って看病することができました。
医局内で女性医師の割合は?
男女の割合はおおよそ8対2で男性が圧倒的に多いです。かつては女性がいない時期もありましたが、最近は徐々に増えています。現在のところ医局には育児中の女性医師は自分を含めて2人のみですが、今後、産休・育休・時短勤務を利用して働く女性医師のロールモデルとなるよう努めています。

仕事と育児の両立

現在の1日のタイムスケジュールを教えてください
朝6時30分に起床し、7時15分~30分に保育園に預けて、8時30分~9時に勤務開始します。週30時間の勤務で考えると15~16時くらいまで仕事をして、 17時過ぎに迎えに行き、夕食とお風呂を済ませて19時30分~20時30分の間に寝かしつけています。 保育園がすごくあそばせてくれるところなので、朝寝、昼寝、夕寝もしていますが、 夜もぐっすり寝てくれます。
帰宅後の工夫は?
帰宅後は仕事を全て忘れて、子どもとしっかり向き合う時間を大切にしています。スマホも極力見ないようにして、仕事に触れないようにして、なるべく一緒に遊ぶことを心がけています。
仕事の効率化で工夫していることは?
子どもとの時間を割いて仕事をさせてもらっているという認識を常に持ち、無駄な時間を作らないよう気合を入れています。出産前はキリの良いところまでやってしまおうと、仕事が間延びすることもありました。今は限られた時間で最大限の成果を出すことを心がけています。結果として、メリハリをつけて仕事ができるようになり、仕事効率は上がったと感じます。
育児と仕事の両立で大変だったことと良かったことは?
大変だったことは、子どもが発熱した際の保育園からの呼び出しや夜泣きです。
良かったことは、耳鼻科は子どもの外来や手術が多いのですが、子どもを持つ親の気持ちが理解でき、患者さんのご両親にも、より寄り添えるようになったことです。
リフレッシュ方法は?
家族でアスレチックに出かけた様子

大学時代からテニス部に所属しており、産後2カ月からテニス教室に復帰しました。週1時間程度、テニスをすることで、頭がすっきりし、社会とのつながりも感じられるため、精神的に良い影響があります。家にずっといて子どものお世話をしていると孤独を感じることもあるので、外に出て人と話し、体を動かすといいリフレッシュになります。

育児の役割分担はどのようにしていますか?
送り迎えは私が100%担当していますが、夫が主体的に育児に参加してくれています。仕事が終わると急いで帰宅し、早く帰ってこられた日は子どもにご飯を食べさせたり、お風呂、寝かしつけをしてくれます。今後フルタイム復帰や当直を行うことになった場合は、母へのサポート依頼やシッター活用の検討も必要かなと考えています。フルタイムで働く際は、母の支えが必要になると思い、二世帯住宅を建てました。母はまだ働いているので、定年退職後に一緒に住む予定です。

キャリア展望とメッセージ

今後のキャリア目標は?
現在は専攻医であり、 子育てと両立しながら専門医試験の合格を目指しています。
藤田医科大学の魅力は?
時短勤務といっても、週何時間働くなど柔軟な形式で自分で選べるシステムがあります。その時々のできる具合に応じて勤務を調整できるのは、本当にありがたいポイントです。
後輩女性医師へのアドバイスはありますか?
インタビュー風景

時間の制約がある中でも、仕事の向き合い方を工夫することで、 仕事の質を高めることができる と感じています。

出産前よりもメリハリのある働き方ができる可能性があり、 ライフイベントによって仕事に割ける時間は減りますが、 仕事との向き合い方を含めて考えれば、 人生全体ではプラスになる と私は考えています。とはいえ、私もまだまだ仕事と育児の両立の仕方について模索中のところではあるので、他科の女性医師の働き方なども参考にしつつ、自分のキャリアにとっても子どもにとってもより良い働き方を探していきたいと考えています。

「本当なら子どもと過ごしている時間に働かせていただいている。だからこそ、モチベーションを高く維持できます」と穏やかに語る先生の表情がとても印象的でした。

自分で線を引き、周囲と支え合いながら前に進む姿勢。その挑戦は、多くの方に勇気を与えてくれるはずです。

本インタビューが、「自分らしい未来」を描くヒントとなりましたら幸いです。

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