本研究では、幼少期の社会的孤立によるストレスが大腸の粘液を産生する杯細胞を減少させ、それが認知機能障害を引き起こすという精神疾患の新たな発症メカニズムを世界で初めて解明しました。さらに研究グループは、胃潰瘍や胃炎の治療に広く用いられている治療薬レバミピドに着目。隔離してストレスを受けたマウスに投与したところ、杯細胞の数が回復し、シスチンの減少やミクログリアの活性化が抑えられ、認知機能障害が大きく改善されることを実証しました。現在の精神疾患治療薬の多くは脳に直接作用するため、副作用や効果の限界が課題とされています。レバミピドは既に臨床で使用されており、副作用も少ないことから、精神疾患に対する安全で有望な治療薬として期待されます。腸と脳の機能的な連関である「脳腸相関」に基づく本研究成果は、従来とは異なる視点から精神疾患の治療法を切り拓くものとして注目されています。
研究者
医療科学部 レギュラトリーサイエンス分野
田辺萌夏 助教
医療科学部 レギュラトリーサイエンス分野
國澤和生 准教授
医療科学部 レギュラトリーサイエンス分野
毛利彰宏 教授
藤田医科大学
鍋島俊隆 客員教授
et al.


