抗うつ薬として広く使用されているセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、自閉スペクトラム症(ASD)にも効果があることが報告されていますが、その作用機序については不明でした。そこで研究グループは、ASDの発症にグルタミン酸神経系とセロトニン神経系の相互作用が関与していると仮説を立て、胎生期バルプロ酸曝露によるASD様モデルマウスを光遺伝学的なアプローチで検証。その結果、モデルマウスではセロトニン神経系の機能低下によりグルタミン酸神経系機能が亢進していることが認められ、亢進を抑制するメマンチンを投与すると、ASD様行動は改善しました。また、SSRIの一つであるフルオキセチンを投与すると、セロトニン神経が活性化された一方で、グルタミン酸神経シグナルは抑制され、社会性や認知記憶の改善が見られました。この結果は、セロトニン1A受容体を介したグルタミン酸神経系の機能抑制がASD様行動を緩和することを示唆しており、治療薬の新たな開発ターゲットとなることが期待されます。
研究者
医療科学部 レギュラトリーサイエンス分野
倉橋仁美 助教
医療科学部 レギュラトリーサイエンス分野
國澤和生 准教授
医療科学部 レギュラトリーサイエンス分野
毛利彰宏 教授
藤田医科大学
鍋島俊隆 客員教授
et al.


