しかし、すい臓がんや胆道がんは今なお治療が難しく、新たな治療選択肢が求められています。
こうした治療が難しいがんの新たな治療法として期待を集めているのが、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法:Boron Neutron Capture Therapy)です。
今回は、BNCTの仕組みと現時点での実力、そして、これまで治療が難しかったがんへの応用に挑戦する藤田医科大学の取り組みをお伝えします。
※本記事で紹介する「すい臓がん・胆道がんへの応用」はあくまで研究段階の話であり、現時点のBNCTでは対応できないことにご注意ください。本記事では、BNCTの概要と本学の研究の考え方を紹介します。
BNCTとは
中性子とホウ素の核反応を利用する放射線治療の一つです。

このように、ホウ素薬剤の集積と中性子の照射という2つの条件をうまく機能させることで、がん細胞を選択的に攻撃するのが、次世代のがん治療「BNCT」です。
- ホウ素薬剤の投与:がん細胞に取り込まれやすい性質を持つホウ素を含んだ薬剤を点滴で投与します。
- 中性子の照射:その後、患部に中性子をあてます。
- 細胞内での核反応:ホウ素と中性子が核反応を起こし、がん細胞を破壊する強い放射線が発生します。この放射線は、0.01ミリ以下という細胞1個分程度のごく短い距離しか飛ばないため、正常な細胞には影響を及ぼしにくいという特徴があります。

このように、ホウ素薬剤の集積と中性子の照射という2つの条件をうまく機能させることで、がん細胞を選択的に攻撃するのが、次世代のがん治療「BNCT」です。
一般的な放射線治療との違い
一般的な放射線治療では、体の外から放射線を照射し、がん細胞の“設計図”であるDNAを傷つけることでがん細胞の増殖を抑えます。しかし、DNAの傷が小さい場合には、がん細胞が自力で修復して生き残ってしまうことがあります。
これに対しBNCTでは、まず「ホウ素」を含む薬剤を投与し。がん細胞にホウ素を集めます。そこに中性子を照射すると、がん細胞に取り込まれたホウ素と中性子が反応し、細胞の内部でミクロな核反応を起こします。この反応によってDNAに大きなダメージを与えるため、がん細胞が自ら修復することが難しくなると考えられています。
つまり、BNCTは「ホウ素を集める」ことと「中性子を照射する」ことを組み合わせて効果を発揮する治療法です。そのため、ホウ素がどこにどれだけ集まるか、十分な中性子を届けられるかが重要になります。
これに対しBNCTでは、まず「ホウ素」を含む薬剤を投与し。がん細胞にホウ素を集めます。そこに中性子を照射すると、がん細胞に取り込まれたホウ素と中性子が反応し、細胞の内部でミクロな核反応を起こします。この反応によってDNAに大きなダメージを与えるため、がん細胞が自ら修復することが難しくなると考えられています。

つまり、BNCTは「ホウ素を集める」ことと「中性子を照射する」ことを組み合わせて効果を発揮する治療法です。そのため、ホウ素がどこにどれだけ集まるか、十分な中性子を届けられるかが重要になります。
どんながんに使われているの?
BNCTは2020年に日本で保険適用となりました。現在のBNCTの保険適用は、ホウ素薬剤ステボロニン(ステラファーマ株式会社)と中性子加速器NeuCure(住友重機械工業株式会社)を用いた「切除不能な局所進行、または局所再発頭頸部がん」のみです。
それ以外のがん種への使用は、2026年8月現在、保険適用外です。
現在のBNCTでは中性子を体の深部まで十分に届けることが難しいため、治療対象は主に体表に近い部位のがんに限られています。また、治療の実施にはホウ素薬剤を投与する体制だけでなく、中性子を発生させる特別な加速器が必要であり、実施できる医療機関は日本国内でも限られています。
※藤田医科大学病院では現在、保険診療としてのBNCTは実施していません。2028年夏のBNCT臨床開始に向けて準備をしています。
それ以外のがん種への使用は、2026年8月現在、保険適用外です。
現在のBNCTでは中性子を体の深部まで十分に届けることが難しいため、治療対象は主に体表に近い部位のがんに限られています。また、治療の実施にはホウ素薬剤を投与する体制だけでなく、中性子を発生させる特別な加速器が必要であり、実施できる医療機関は日本国内でも限られています。
※藤田医科大学病院では現在、保険診療としてのBNCTは実施していません。2028年夏のBNCT臨床開始に向けて準備をしています。
BNCTの特徴と、知っておきたい現在地
BNCTには、これまでの放射線治療にはない特徴があります。一方で、実用化に向けて乗り越えるべき課題もあります。ここでは、BNCTの特徴と現在地を紹介します。
1. 細胞レベルで攻撃する仕組み
BNCTでは、ホウ素と中性子の核反応によって、細胞1個分ほどのごく短い距離で強い放射線が発生します。そのため、ホウ素をがん細胞に集めることで、がん細胞を選択的に攻撃することが期待されています。
しかし、ホウ素は正常組織にも分布するため、正常組織への影響を完全になくせるわけではありません。ホウ素をいかにがん細胞だけに集められるかが、重要なポイントになります。
2. 体の深部にあるがんへの応用には課題がある
すい臓がんのように体の奥深くにあるがんは、治療が難しいがんの一つです。BNCTは、中性子とホウ素ががん細胞の中で反応を起こして攻撃する治療法ですが、中性子を体の深い場所まで十分に届けることが難しいという課題があります。また、特に胃腸など、がん以外の正常な組織にも薬が集まることがあります。そのため、すい臓がんなどへのBNCTの応用は、これらの課題を解決するための研究が進められている段階です。
3. 治療回数を抑えられる可能性
現在保険適応になっている治療は基本的に1~2回の中性子照射で完了し、1回の照射時間も30~60分程度です。一般的な放射線治療と比べて、治療回数が少ないこともBNCTの特徴の一つです。
4. 病院内に設置できる小型加速器の実用化
かつてBNCTのために中性子を当てるには原子炉が必要でしたが、現在は病院内に設置できる医療用加速器を使った治療が実用化されています。これはBNCTを医療として届けるための大きな一歩となりました。
しかし“小型”加速器といえども、導入には、装置を設置するための広いスペースや、放射線を安全に管理するための設備などが必要で、導入には一定のハードルがあります。
1. 細胞レベルで攻撃する仕組み
BNCTでは、ホウ素と中性子の核反応によって、細胞1個分ほどのごく短い距離で強い放射線が発生します。そのため、ホウ素をがん細胞に集めることで、がん細胞を選択的に攻撃することが期待されています。
しかし、ホウ素は正常組織にも分布するため、正常組織への影響を完全になくせるわけではありません。ホウ素をいかにがん細胞だけに集められるかが、重要なポイントになります。
2. 体の深部にあるがんへの応用には課題がある
すい臓がんのように体の奥深くにあるがんは、治療が難しいがんの一つです。BNCTは、中性子とホウ素ががん細胞の中で反応を起こして攻撃する治療法ですが、中性子を体の深い場所まで十分に届けることが難しいという課題があります。また、特に胃腸など、がん以外の正常な組織にも薬が集まることがあります。そのため、すい臓がんなどへのBNCTの応用は、これらの課題を解決するための研究が進められている段階です。
3. 治療回数を抑えられる可能性
現在保険適応になっている治療は基本的に1~2回の中性子照射で完了し、1回の照射時間も30~60分程度です。一般的な放射線治療と比べて、治療回数が少ないこともBNCTの特徴の一つです。
4. 病院内に設置できる小型加速器の実用化
かつてBNCTのために中性子を当てるには原子炉が必要でしたが、現在は病院内に設置できる医療用加速器を使った治療が実用化されています。これはBNCTを医療として届けるための大きな一歩となりました。
しかし“小型”加速器といえども、導入には、装置を設置するための広いスペースや、放射線を安全に管理するための設備などが必要で、導入には一定のハードルがあります。
藤田医科大学の挑戦
BNCTには、正常組織への影響、中性子を深部まで届けること、適用できるがんが限られていることなどの課題があります。藤田医科大学では、これらの課題を解決するため、ホウ素薬剤の体内分布を調整する薬剤の研究や、深部への照射を可能にする専用施設の開発、患者ごとのホウ素薬剤の取り込みを見極める個別化治療の研究を進めています。
すい臓がんや胆道がんなどへのBNCTの適用拡大をめざし、着実に研究を進めています。
すい臓がんや胆道がんなどへのBNCTの適用拡大をめざし、着実に研究を進めています。
この記事の監修は…
藤田医科大学 BNCT研究センター 副センター長/教授
渡邉 翼 教授
専門は放射線腫瘍学とホウ素中性子捕捉療法(BNCT)。特に、BNCT用ホウ素薬剤の体内分布の解析と修飾、薬物動態解析、放射線治療後の免疫応答や腫瘍微小環境の研究など。
京都大学医学部卒業後、放射線科医として臨床経験を積み、京都大学大学院で医学博士を取得。ドイツ フライブルク大学への研究留学を経て、京都大学複合原子力科学研究所および白眉センターで研究・教育に携わる。2026年4月に藤田医科大学BNCT研究センター教授に就任。現在は、すい臓がんをはじめとする体深部がんへのBNCTの応用をめざし、基礎研究と臨床をつなぐトランスレーショナル研究を推進している。
そんな渡邉教授は、学生時代に放射線治療の講義でBNCTと出会い、その理論の美しさに強く惹かれたそう。物理学と医学という異なる分野が一つの治療法として結びついていることに、「こんなに洗練された治療法があるのか」と心を動かされたという。
放射線治療科の医師となってからも、京都大学大学院でBNCTの研究に取り組み、「1人でも多くの患者さんにBNCTを届けたい」という信念のもと、研究と診療の両面からBNCTの可能性を追究している。
※本記事は2026年9月8日時点の情報をもとに掲載しています。医療に関する情報は日々更新されるため、必要に応じて医療機関にご相談ください。


