リハビリテーション医学IRehabilitation Medicine

研究室スタッフ

教授
  • 大高 洋平
  • 才藤 栄一(学長)
  • 加賀谷 斉(第2病院)
准教授
  • 柴田 斉子
  • 向野 雅彦
講師
  • 平野 哲
  • 前田 寛文
  • 戸田 芙美(第4病院)
  • 當山 峰道
助教
  • 森 志乃
  • 小川 真央
  • 千手 佑樹
  • 舟橋 怜佑(第2病院)
  • 木曽 昭史
  • 竹尾 淳美
  • 細川 浩
助手
  • 牧野 稜
  • 西脇 大雅

主任教授より

リハビリテーション医学・医療は、「活動」に重心をおき、動物(動く物)である人間の「動く」機能を追求しています。動くこと自体を強力な武器に障害を克服し、病態部分のみに着目するのではなく個体と取り巻く環境を一体のシステムとして捉え、「システム的解決」により、全体をよりよい状態へ導き生活を再建するというユニークな学問・医療です。
活動障害の包括的医学管理に精通したリハビリテーション科医師、運動・認知の制御・学習を最大限に支援する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、活動障害のバイオメカニクスと支援機器を熟知した義肢装具士・リハビリテーション工学士、患者さんに寄り添い、その成果を生活に般化する看護師、そして社会化の援助をするソーシャルワーカーといったエキスパートからなるチームにより展開します。
「考え得る最高のリハビリテーション医学・医療を創り出し、その文化を普及、発展させることで、社会、患者に貢献する」という使命を果たすべく日々考え実践し、少しでも優れたモデルを模索しその創造に取り組んでいます。高齢化の進む社会において、先進的で包容力のあるリハビリテーション医学・医療の更なる発展と充実に大きな期待が寄せられています。私たちは、一人でも多くの「一緒に進んでくれる仲間」とこの使命に果敢に取り組んでいきます。
 

診療

当講座は、多数の病床を有し多彩な疾患を扱う藤田医科大学病院、リハビリテーション病棟を中心とする七栗記念病院(リハビリテーション医学II講座)、市中病院として地域のリハビリテーション医療を実践できるばんたね病院、先進的がん治療と救急治療の充実した岡崎医療センターという4つの教育病院を臨床の場としています。4病院の合計病床数は2,423床であり、うち回復期リハビリテーション病棟を210床(藤田医科大学60床、七栗記念病院150床)有しています。2019年度のリハビリテーション科の年間初診合計は13,257名、延べ423,214名です。中央診療科の役割として、入院患者の約40%にリハビリテーションを実施し、うち3割は集中治療室で開始し超急性期から、動けない患者さんを主な対象に積極的な介入を行っています(藤田医科大学病院)。
七栗記念病院では2,000年度に「最短の入院期間で最高の到達度」を達成する「統合的高密度リハビリプログラム:FIT Program(the Full-time Integrated Treatment Program)を開始しましたが、その後、我が国に広く普及した365日回復期モデルとなりました。リハビリテーションロボットなど先進技術を融合してFIT Programは進化し、新モデルが藤田医科大学病院・七栗記念病院において展開しています。
リハビリテーション医療・医学は病院のなかでは完結しません。生活の中で大きな力を発揮します。藤田医科大学では大学初の地域包括ケア中核センターを設置し生活期までしっかりカバーしています。急性期から生活期まで一貫したシームレスなリハビリテーション医療モデルを実現しています。


教育

最高の臨床実現のためには豊かな教育が必須です。当講座では卒前・卒後教育ともに最大限の力を注いでいます。さらに、国内外から多数の研修生や留学生も受け入れ、共に学び成長する姿勢を大切にしています。
卒前教育(学部教育)の主眼は、全ての臨床家に必要なリハビリテーション医学・医療の考え方の枠組を修得してもらうことです。基本となる「活動障害」、「活動-機能-構造連関」という考え方を基に、特に不動・廃用、ADL、運動学習、支援機器という概念の重要性を強調しています。1年生のクリニカルエクスポージャーに始まり、4年生の系統講義、そして5年生の臨床実習においては、入院患者さんの治療計画を立てるなどの実践的教育を行っています。七栗記念病院では1週間のポリクリ期間中に入院患者の診察の他、入浴介助や実際の歩行訓練への参加などの課題が設定されています。また、ゴールデンウィークと夏休み期間中には、全国の医学生を対象とした臨床実習を含む医学生リハビリテーションセミナーを開催しています(2019年には全国から24名の参加)。
卒後教育は、藤田医科大学病院、七栗記念病院ともに日本リハビリテーション医学会研修施設であり、双方の施設ともにそれぞれ専門研修プログラムを有しています。そのうち、当講座を基幹施設とした藤田医科大学リハビリテーション科専門研修プログラムでは、多様な特徴を有する連携施設(18施設)の多数の指導医による手厚い指導のもと、急性期から生活期までの実践的な豊富で臨床経験を積むことができます。なかでも基幹病院では、国内でも数少ない大学病院のなかに回復期リハビリテーション病棟および地域包括ケア中核センターを有しており、急性期から回復期さらには生活期まで全ステージにおいて最先端のリハビリテーション医療をしっかりと研修することができます。出身がさまざまな先生が全国より集まり、切磋琢磨の結果、毎年、続々と専門医が誕生しています。2020年現在、当講座の構成員(出向者を含む)の専門医は73名となっています。
大学院教育にも積極的に取り組んでいます。臨床研究を中心課題としながら、リハビリテーション医学や診断学、治療学、運動学などの特論講義・実習をおこない、リハビリテーション医学・医療の実践的研究者を養成するためのカリキュラムを構成しています。活動分析、摂食・嚥下障害、歩行再建、ロボティクス、神経生理などの研究テーマを進めています。大学院には、医師のみならず療法士も毎年多数入学しています。また、海外からの大学院入学も受け入れています。
リハビリテーション医学・医療はチームワークが重要です。藤田医科大学には、療法士の学科として、保健衛生学部リハビリテーション学科があり、当講座は、積極的に療法士教育にも関わっており、講義を担当する他、臨床実習に寄与しています。また、認定看護師教育課程「摂食嚥下障害看護」の実習生を受け入れ、研修を行っています。
常にオープンであることは、当講座の特徴の1つです。国内外からの見学者、短期・長期研修者など随時、多くの医療関係者の訪問があります。2019年度は、20名の海外からの研修・留学者を受け入れました。米国・欧州・アジア各国に20を超える関連施設があり、一流の臨床家や研究者との交流を通じてお互い刺激を受け学び合っています。さらに、藤田リハビリテーション医学・運動学研究会では、国内外の優れた臨床家や研究者を招き、研修会を随時開催し一流の姿勢や最新の知見を学ぶ機会を作っています。

研究

臨床のための研究を重視し、内容はリハビリテーション医学全般に多岐に渡ります。藤田リハビリテーション部門では、多数の療法士を抱え、藤田医科大学が療法士育成の大学学部を有していることもあり、コメディカルとの総合的研究活動が非常に活発です。また、海外との共同研究、多数の企業との共同研究や自治体との産官学連携も積極的に行なっています。主なテーマは下記の通りです。

活動分析・モニタリング
動作・活動・生活を視座とするリハビリテーション医学において、活動を測ることは中心的課題です。hitoe®(NTT)を用いた24時間超心拍モニタリング、ウェアラブルセンサーによる動作・活動の定量計測、ICF(国際生活機能分類)を用いた生活機能評価ツールなどの開発研究に取り組んでいます。

摂食嚥下障害の評価・治療体系化
「食べる」を課題として幅広い研究を行なっています。ジョンズ・ホプキンス大学との共同研究「咀嚼—嚥下連関(chew-swallow complex)」など嚥下(障害)メカニズムの解明、嚥下障害食品開発、嚥下訓練用チェアの開発、嚥下CTや高解像度マノメトリーによる嚥下動態の精緻定量化、末梢磁気刺激、食道入口部の拡張用の食道拡張用バルーンカテーテル開発など幅広い研究をしており、その取り組みは世界から高い評価を得ています。

Dismobiliity(移動障害)の評価治療・支援機器
移動能力はリハビリテーション医学の主なターゲットである重要な能力です。トレッドミルでの三次元動作解析「KinemaTracer」を用いた歩行分析法、片麻痺用の新しい短下肢装具「調整機能付き後方平板支柱型短下肢装具(APS-AFO;Adjustable Posterior Strut-AFO)」、脊髄損傷患者の下肢麻痺者用の歩行自立支援ロボット「WPAL」、片麻痺患者の歩行再建を支援する歩行練習ロボット「Welwalk」、バランス障害者に対するバランス練習アシストロボット「BEAR」、安全懸架装置、下肢痙縮の定量評価などの開発研究を行なっています。また、移動するための運動耐容能の研究やmobilityと表裏一体の関係にある転倒予防研究(AI転倒予測、行動モニタリング、衝撃吸収床材など)も積極的に取り組んでいます。

上肢・生活機能障害
手の作業はヒトの活動の特徴でもあり生活に欠かせません。三次元動作解析による上肢運動の定量化、上肢活動分類、活動分析、末梢磁気刺激による麻痺改善効果、重度麻痺筋の筋パターンのdecodingとそれに基づくゲーム型訓練、上肢ロボット(KINARM)による精緻なリーチ動作分析、In-Motion、ReoGo、CoCoroe、Tryromotionなど様々な上肢ロボットの訓練効果検証、上肢痙縮の定量評価などを行なっています。

認知・情動障害と認知症のための先進プログラム
「理解、判断、論理などの知的機能」である認知は活動に欠かせない能力です。認知機能評価の低侵襲化・規格化・効率化のためのタブレット型の評価機器開発、訓練プログラムの構造化、認知症リハビリテーションプログラム、表情分析等の情動評価、認知情動支援ロボットなどを研究課題としています。

リハビリテーション訓練の構造化
最良のリハビリテーション訓練とはなにかを追求するためには、まず練習の内容を正確に把握する必要があります。当講座では、練習内容の可視化のために5分おきのその内容をlogとして残しています(Project of Exercise Log for FHUR: ELF project)。このlogにより練習内容・プロセスが検討できるようになり帰結との関連等について検証しています。運動学習や活動分析などリハビリテーション治療に必須な知恵を集結し、訓練の構造化に取り組んでいます。

リハビリテーション神経生理学
活動には運動制御や運動学習が基盤にあります。当講座では、脳血管障害など中枢神経系の各種病態における機能回復に関わる中枢神経の可塑性、神経ネットワーク再構築の解明を課題とし、経頭蓋磁気刺激、ロボットによる行動の定量的評価などを駆使して検討を行なっています。また、末梢電気刺激・磁気刺激、反復経頭蓋磁気刺激、経頭蓋電気刺激、迷走神経刺激など神経に対する種々の介入、いわゆるニューロモデュレーション(neuromodulation)を行うことにより、上記の回復機構への影響を検討することにより新しい治療法の可能性も追求しています。

リハビリテーション心理学
リハビリテーション医療は、患者さん本人がいかに能動的に訓練に取り組むかという点が重要です。モチベーション、抑うつ(depression)、活力 (vitality)、apathy、疲労などをキーワードにリハビリテーションに関係する心理状態の質的研究や臨床研究を展開しています。また、患者さんが社会復帰に至るまでの過程には、患者さんや家族、そして医療者、それぞれに複雑な心理状態の変化が生じ、更にはそれぞれの人間同士の心理が交錯します。心理学は、リハビリテーションマネージメントには必須アイテムの1つです。心理学のリハビリテーション医療への活用・応用を考える研修会「リハビリテーション科医のためのマネージメント研修会」を年一回行なっています。

急性期(安静・不動)のリハビリテーション
急性期のリハビリテーション治療は、傷病特定的な病態の増悪・回復と同時に普遍的に生じる「安静・不動」の弊害を最小限にすることが第一義です。藤田医科大学では訓練は、1/3が集中治療室、1/3が急性期病棟のベットサイドで開始されます。集中治療室離床プログラム、呼吸リハビリテーション、mobilityのためのベッドマット開発研究、急性期帰結ビッグデータ解析など行なっています。

先端回復期システム
回復期のリハビリテーション医療は、学習が主な作用機序となる過程です。リハビリテーション医が主治医となり、深みのある多職種のチームマネジメントが展開されるリハビリテーション医療のボリュームゾーンです。我々が開発し七栗記念病院で行なってきた統合的高密度プログラム(FIT Program)の長期実績の検証、そして藤田医科大学病院では発症後から回復期までのベンチマーク創出、回復段階での最適な活動調整法、併存症・合併症・医療安全などさまざまな研究に取り組んでいます。

先端地域包括ケアシステム
リハビリテーション医学は、地域包括ケアシステムの1つの重要な要です。本学の地域包括ケア中核ケアセンターが大きく関わる豊明市における先進的地域包括ケア実践では、共生社会の創出など非常に注目されている成果を上げています。そのなかでは、住環境とロボット技術を融合した高齢者の生活を支援する「Robotic Smart Home」の開発にも取り組んでいます。そのほか、ロボット技術活用地域リハビリテーション寄付講座で展開している豊田市・トヨタ自動車とのロボットを活用した地域包括ケアシステムの開発、伊勢市、滋賀県などで実証、研究開発に取り組んでいます。また、遠隔・オンラインリハビリテーションシステム開発、予防的介入のための運動機能検診および運動プログラム(Medical Exercise Program; MEP)開発も行なっています。MEPは、現在、藤田医科大学病院国際医療センターでウェルエイジングケアプログラムとして提供されています。

リハビリテーション医学教育
療法士は、リハビリテーション医療にとって治療主体であり、効果的療法士教育は、極めて重要な課題です。我が国の療法士教育の問題点を洞察し、新しい療法士教育システム(COSPIRE)を実施しています。このプログラムは、教員が常時臨床家として患者に接しながら学生や若い療法士を教育するというプログラムです。また、全国に先駆けて理学療法士・作業療法士のためのOSCE(Objective Structured Clinical Examination;
客観的臨床能力試験)開発・導入を行なっており高い評価を得ています。また、教育内容の標準化・構造化を目標に、教育現場へのリハビリテーションロボットの活用も取り組み始めています。