プレスリリース

手術支援ロボット・ダビンチを用いた 中咽頭がん切除術を実施しました~咽頭・喉頭がんにおけるロボット手術のメリット~

藤田医科大学病院は、7月8日、中部地方初となるロボット支援下経口的中咽頭がん切除術を実施しました。ダビンチXi※1を用いたものとしては日本初です。執刀は耳鼻咽喉科・気管食道科の楯谷一郎(たてや いちろう)教授です。

※1 米国インテュイティブ社が開発した手術支援ロボット・ダビンチ(da Vinci Surgical System)の最新モデル

咽頭がん・喉頭がんにおけるロボット支援手術のメリット

  • 声が残せる
  • 早期の食事開始
  • 入院期間が短い(2週間程度)
  • 首や顔に傷が残らない

 鼻の奥から口、のどを経て気管へと続く咽喉頭は、呼吸する、食べる、飲み込む、発声するなど人が生きていく上で重要な機能が集中しています。機能の温存に加え、顔という露出した部位が関わるため、手術には美容的な配慮が欠かせません。ダビンチを用いたロボット支援手術は、口から細い内視鏡や手術器具を入れて行うため、皮膚に穴を開ける必要がなく、首を切って行う外科手術と違って外観上の手術痕が残りません。
 また、首を切って行う外科手術では術後数週間から2、3カ月は食事が飲み込めず、話すことも難しい場合がありますが、ロボット手術では局所制御により傷が小さくて済むため、早期の嚥下、発声が可能で、後遺症も少ないといえます。本件での患者さんも経過は良好であり、術後4日目から食事を開始しています。

 頭頸部外科領域でのロボット支援手術の現状

 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域でのロボット支援手術は、2009年に米国で経口的ロボット支援手術が承認されたのを皮切りに世界的に普及しつつありますが、日本ではダビンチの適応外でした。そのため、咽喉頭がんへの適応拡大を目的に、2015年から2016年にかけて楯谷一郎教授主導の下、先進医療Bとして東京医科大学、鳥取大学、京都大学でロボット支援手術の多施設臨床試験を実施。さらに日本耳鼻咽喉科学会、日本頭頸部外科学会、日本頭頸部癌学会がダビンチの早期導入を希望する要望書を厚生労働省へ提出しました。それらの結果や経緯をふまえ、2018年8月、経口に限り頭頸部外科領域でのロボット支援下手術が薬機法の適応として承認されました。現在は実施に関する体制の整備が進められており、2020年度の診療報酬改定での保険収載が期待されています。

全国の医師が本学でトレーニング

 ロボット支援下手術の安全な普及を目的に、日本頭頸部外科学会が指針や教育プログラムを作成し、今年4月から運用されています。教育プログラムは、カダバートレーニング※2が必須項目となっており、日本で唯一、本学だけに設置されているダビンチの研修も行えるカダバートレーニング施設で全国の医師が技術を磨いています。
※2 ご遺体や献体を用いた手術手技研修