プレスリリース

ファイザー社の新型コロナワクチンで、接種約3ヶ月後に抗体価が低下することを発表しました

藤田医科大学は新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社)を接種した本学教職員の血液中抗体価の調査を行っています。これまでの研究により、2回目のワクチン接種後に新型コロナウイルスに対する抗体が大幅に上昇することを報告しました。今回、ワクチンの1回目接種約3ヶ月後の結果を併せて報告します。
ワクチン接種前から約3ヶ月後までの血液が得られた209名(男性67名、女性142名)の抗体価を測定しました。3ヶ月後の抗体価の平均値は、2回目接種後に比べて約1/4に減少しました。また、抗体価は年代・性別を問わず全ての被検者で減少しました。
2回目のワクチン接種から時間が経つと、感染力が強いデルタ株などに対する発症予防効果が低下すると考えられており、海外では3回目の接種(ブースター接種)が進められています。今回の結果は、日本人においても時間の経過とともにワクチンの効果が低下することを示唆する結果と考えられます。

研究成果のポイント

  • 抗体価の平均値は2回目接種後に比べて3ヶ月後は大幅に低下
  • 性別・年代を問わず全ての被検者で抗体価は低下

背景

現在、わが国では新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいます。先行して接種が進んでいる65歳以上では、感染者数や重症者数が減少するなどワクチンの著明な効果が現れてきています。
しかし、2回目の接種から時間が経つと感染力が強いデルタ株などに対するワクチンの効果が低下することが明らかになり、各国で3回目の追加接種(ブースター接種)が検討されています。イスラエルではすでにブースター接種を行っています。
本学では、ファイザー社のワクチンを接種した教職員を対象に、接種後の抗体価の経時的な変化を調べています。ウイルス中和活性※1と強く相関する受容体結合ドメイン(Receptor Binding Domain: RBD)※2に対するIgG抗体を測定したところ、2回目接種後にIgG抗体が大幅に上昇することを報告しました(2021年7月26日)。 今回、ワクチンを接種してから約3ヶ月後の結果が得られたので報告します。

本学教職員の中で研究参加に同意をいただいた方のうち、ワクチン接種前から接種後約3ヶ月後までの血液が得られた209名(男性67名、女性142名)を対象にしました。ワクチン接種前、1回目接種後約14日目、2回目接種後約14日目、1回目接種後約3ヶ月目に採血を行いました。測定試薬はアキュラシード COVID-19抗体(富士フイルム和光純薬株式会社)を用いました。血液中のIgG抗体を測定したところ、2回目接種後に全ての被検者で抗体価は上昇しましたが、3ヶ月後の抗体価の平均値は2回目接種後に比べて約1/4に減少しました。また、3ヶ月後においても抗体価には個人差がありました。

次に、年代別の抗体価の平均値の推移を調べたところ、60~70歳代の抗体価は全ての時期で50歳代以下よりも低い傾向にありましたが、全ての年代で抗体価の平均値は接種3ヶ月後に大幅に低下しました。

また、性別の抗体価の平均値の推移を比較したところ、2回目接種後と3ヶ月後で女性のほうが抗体価は高い傾向にありましたが、男性も女性も抗体価は接種3ヶ月後に大幅に低下しました。

今後の展開

今回の研究により、抗体は2回目接種から時間が経過すると低下することが確認されました。測定したIgG抗体は、ウイルスの感染や増殖を抑制する中和活性と高い相関があるため、この結果はワクチンの効果が時間とともに低下している可能性を示しています。ただし、ワクチンの効果は抗体産生だけでなく、細胞性免疫によるものもあります。抗体価の低下がどの程度ワクチンの発症予防効果、重症化予防効果などの低下を示しているかは今後も研究が必要です。

用語解説

※1:ウイルス中和活性
   ウイルスの感染や増殖を阻害する抗体を中和抗体といい、その作用を中和活性といいます。

※2:受容体結合ドメイン(Receptor Binding Domain: RBD)
   新型コロナウイルスがヒトの細胞の中に侵入する際に必要な部分。
   ウイルスはRBDを介して細胞の表面にある受容体(ACE2)に結合する。

謝辞

本研究に参加していただいた教職員の皆様、ご支援いただいた治験・臨床研究支援センターおよび臨床検査部の皆様、研究室の皆様に感謝致します。