プレスリリース

ファイザー社の新型コロナワクチン 3回目(追加)接種の抗体上昇効果を確認

 本学大学院保健学研究科の藤垣英嗣准教授、山本康子准教授、齋藤邦明教授らの研究グループは、本学教職員約200名の新型コロナワクチン(ファイザー社)接種後の抗体価の追跡調査を行い、追加(3回目)接種によるブースター効果を確認することができました。また、本学職員約3,000名の抗体価の測定結果から、2回目を接種してから日数が経過した人ほど抗体価は低い傾向にあることがわかりました。これらは、3回目接種の重要性を示す結果であり、2回目接種後に低下した各種予防効果が追加接種により高まることが期待できます。

研究成果のポイント

  • 3回目接種後の抗体価は2回目接種後の2.3倍。
  • 3回目接種後の抗体価は3回目接種前の27.8倍。
  • 2回目接種から約6か月後の抗体価は接種直後の約10分の1に低下。
  • 約3,000名の調査結果からも、性別を問わず接種後日数が経過するほど抗体価が低い人が多くなる傾向を確認。

背景

新たな変異株の出現により新型コロナウイルス感染が拡大している現在、3回目接種が急がれています。海外の臨床研究により3回目接種の入院予防・重症化予防・死亡予防などの各種予防効果はすでに報告されていますが、日本国内での情報はまだ限られています。本学では、ワクチンを接種した病院職員・教職員を対象に、接種後の抗体価の経時的な変化を調べています。今回、3回目接種後の測定結果が得られたので報告します。また、本学では健康診断時に職員の抗体価を測定しています。その結果も併せて報告します。


研究手法

抗体価の経時的な変化

本学病院職員・教職員の中で研究参加に同意をいただいた方のうち、ワクチン接種前から3回目接種後まで経時的に血液が得られた198名(男性62名、女性136名)を対象にしました。ワクチン接種前、1回目接種約14日後、2回目接種約14日後、2回目接種約70日後、2回目接種約6か月後、3回目接種約14日後の6回の採血を行いました。抗体価はアキュラシードCOVID-19抗体(富士フイルム和光純薬株式会社)を用い、血清中のSARS-CoV-2受容体結合ドメイン(receptor binding domain: RBD)に対するIgG抗体を測定しました。

本学職員の抗体価の測定

3回目を接種する前の本学職員の健康診断時に得られた血清(男性1,176名、女性2,149名、合計3,325名)を用いて上記と同様の方法でIgG抗体価を測定しました。


研究成果

抗体価の経時的な変化

2回目接種から約6か月経過後の抗体価の平均値は、2回目接種直後に比べて約10分の1に低下しましたが、3回目の接種により抗体価は大幅に上昇しました。3回目接種後の抗体価は、2回目接種後に比べると2.3倍、3回目接種前に比べると27.9倍に上昇しました。
 

約3,000名のワクチン接種後の抗体価

本学職員3,325名の健康診断時のIgG抗体価を測定したところ、2回目を接種してから1か月程度の人の抗体価は高いレベルにありましたが、性別にかかわらず接種してから日数が経過するほど抗体価が低い人が多い傾向にあることがわかりました。

おわりに

今回の結果により、2回目のワクチン接種後に上昇した抗体価は約半年で10分の1程度まで低下することがわかりました。しかし、3回目の追加接種を行うことで抗体価は再び上昇することがわかりました。これらの結果は、追加接種の前倒しが必要な理由を反映した結果と思われます。また、3回目接種後の抗体価の平均値は2回目接種後の2倍以上を示しており、各種予防効果は2回目接種後よりもさらに高まることが期待できます。
現在、日本を含めた世界各国において、オミクロン株の感染が拡大しています。ワクチンのオミクロン株に対する予防効果は従来の株よりも低下することが知られていますが、3回目接種により予防効果は回復することも報告されています。今回の結果からも明らかなように、2回目接種後の日数が経過するほど抗体価が低い人が多くなるため、半年以上経過した人はできるだけ早く3回目を接種することでオミクロン株に対する発症・重症化予防効果を高めることができます。
また、今回の結果はすべてファイザー社のワクチンを接種した人の結果ですが、武田/モデルナ社の追加接種および初回接種と追加接種で異なるワクチン接種(交互接種)でもブースター効果は認められ、副反応も同程度であることが報告されています(※)。ワクチンの種類に関わらず、3回目接種を行うことが勧められます。

藤田学園 新型コロナウイルス対策本部 本部長 土井洋平コメント

今回の研究結果は、海外の研究データとも一致しており、日本人においても3回目接種が有用といえます。2回目接種の半年後に抗体価が10分の1程度に低下することについては、効果が10分の1に下がるわけではなく、重症化予防効果は引き続き維持されていることが分かっています。ただ、オミクロン株は大事に至ることが少ないといわれていますが、今後新しい変異株が出現する可能性も否定できません。長期的な備えとして、高齢者や基礎疾患のある方はもちろん、若い方や副反応を心配されている方もご自身の身を守るためにもぜひ3回目接種を受けていただきたいと思います。日常を回復していくために、一人ひとりがワクチン接種やマスク・手洗いなどの感染予防対策に取り組みましょう。