プレスリリース

藤田医科大学はリバーセルと共同研究契約を締結しました
汎用性キラーT細胞を用いた新型コロナ治療法を共同開発

藤田医科大学(愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1番地98 学長 才藤栄一)とリバーセル株式会社※1(本社:京都府京都市上京区 以下リバーセル 代表取締役 佐治博夫)は、新型コロナウイルス感染症に対する新しい治療法の開発を共同研究として進める契約を締結しました。
当契約に基づき、本学の医学部輸血細胞治療科 三浦康生教授が、リバーセル株式会社の京都大学再生医学研究所 河本宏教授と共同で、iPS細胞から再生した汎用性のキラーT細胞※2を用いた新型コロナウイルス感染症の治療法開発に取り組みます。

本学は、これまでダイヤモンド・プリンセス号からの乗客乗員の引き受け、アビガンの臨床試験など、新型コロナウイルス感染症に対して本邦を先導して取り組んでまいりました。新型コロナウイルス感染症の新しい治療法の開発にあたっては、大きな強みを持っていると自負しております。
リバーセルは、京都大学の河本宏教授が開発した汎用性即納型キラーT細胞製剤を用いた治療法の臨床応用を目指すベンチャー会社です。柱となる再生T細胞製剤の技術をがん治療へ応用する事業に加え、この技術を新型コロナウイルス感染症に対して応用する事業にも着手されています。

キラーT細胞製剤による治療法確立を目指して

新型コロナウイルス感染症に対する免疫療法としては、ワクチン接種、抗体の投与、元患者血漿の投与などの方法の開発が、世界中で数多く進められていますが、この共同研究で開発されるキラーT細胞製剤は、これら既存の戦略とは異なる全く新しい戦略です。すなわち、この治療法の開発に成功すれば、人類は新型コロナウイルス感染症に対して、新たな治療戦略を手にすることになります。本共同開発研究では、2-3年以内の臨床応用を目指しています。
同様の治療戦略は、新型コロナウイルス感染症だけではなく、今後他の様々なウイルス感染症にも応用できます。本学は、「汎用性T細胞製剤を点滴して治す」という方法が、重症のウイルス感染症に対する有効な治療法になると考えています。

ウイルスに対する免疫反応

ウイルスは、細胞に侵入してその細胞内で増殖し、その後細胞外に出て他の細胞に感染するという方式で感染を広げていきます。ウイルスに対して起こる主な免疫反応には、 B細胞が作る抗体によるものと、キラーT細胞によるものがあります(右図参照)。抗体は、ウイルスが細胞外にいる時に、ウイルスに結合してウイルスを無力化します。一方、キラーT細胞は、ウイルスが感染した細胞を殺傷することによって、ウイルスを殲滅します。ウイルス感染症が治るためには、抗体だけでは不十分で、キラーT細胞の働きも必要だとされています。

補足説明

※1 リバーセル株式会社
京都大学の河本宏教授が開発した汎用性即納型キラーT細胞製剤を用いた治療法の臨床応用を目指すベンチャー会社。2019年10月に河本宏教授を創業者として、創立されました。現在、河本研究室は、汎用性再生T細胞製剤を用いて、WT1抗原を標的にした急性骨髄性白血病の治療戦略を開発中であり、リバーセルはその開発を支援されています。

※2 キラーT細胞
キラーT細胞はウイルス感染細胞やがん細胞を見つけ出して殺傷する能力を持つT細胞の一種です。T細胞を薬剤としたT細胞製剤は、iPS細胞から再生することにより、量産が可能になります。この時の材料として、患者の免疫系に拒絶されにくい汎用性のiPS細胞を用いれば、誰にでも投与できるT細胞製剤を作製できます。そのようなT細胞をあらかじめ大量に作製して凍結しておくことにより、患者が必要とした時に解凍して投与することができます。また、大量生産することにより、コストを下げることも可能になります。